クリスマスの日

クースケ

第1話クリスマスにサンタがやってくる

別名ー子捨て園と、呼ばれている場所がある

そこは《ミチル園》という名で

都心からだいぶ離れた所に位置する

そこには、子育てを親に放棄された子や、刑務所で生まれて、親を知らない子、親に虐待されてきたなど様々な事情を持った子供達が集まっていた。



「さあ、今日はクリスマス。サンタが、今年も皆にプレゼントを持ってきてくれましたよ」


園長の言葉に、日頃は喜怒哀楽をあまり表さない子供たちも、そわそわと入り口の方をみて落ち着かない。


園長の、永井 桜は園児20名と、スタッフ5名と共に年に一度のこの日を、心待ちにしていた。何せ不便な立地に加えて、お客など滅多にこないからである。疎外されている子供たちにとって、外部からわざわざ自分達のためプレゼントを持ってきてくれるなんて 計りしれない喜びだ


ドアが開いて、待ちに待った9人のサンタがやってきた。頭は白く 定番の赤と白の服装で長い髭が生えている。彼らの担いでいる大きな白い袋には沢山のプレゼントが入っている。サンタの1人が「今年も、またみんなの顔が見られてうれしいよ。元気にしてたかい。」その言葉を、聞く間も惜しいように大きな白い袋に、くぎ付けの子供達

「サンタ」「サンタさんだ」「プレゼントちょーだい」あっという間に子供達に、囲まれる。園長が、「こんな風じゃ、サンタさんも呆れて帰るわよ。ほら順番に、ならんで」と、喝を入れる。


園長は最後の子まで、プレゼントがいき渡るのを見計らってサンタ達を2階に連れてくる。そこには、大きな四角いテーブルに、これでもかと料理や飲み物がおかれており、園長がテーブルに座ってくつろぐようにいってから「今年もご苦労さまです。こんな辺鄙な所に毎年来てくれて感謝しきれないわ」と、人懐っこい顔で、笑うと目が細くなる。


「私達こそ、毎年、外部の人間にこうやって家族の様に迎えてくれて、夢のような1日です」サンタの1人が言う。


「鈴木くん、志方くん今年もきてくれたのね。あなた達にとってここは、生まれ育った家なのよ」毎年、俺達の顔を見る度に後悔の念に、苛まれている。そんな、表情をみることは正直辛い。それでも毎年ここに来てしまうのは、今だからこそわかる愛情。俺たちの故郷。園長やスタッフや、子供達に会いに。そんな俺たちのの心を見透かすように園長は、サンタの一人一人の名前を優しく呼び話しかける。


「佐々木君、あなたの息子 陽介は最近あなたに似て、結構やんちゃなのよ。12歳になって、反抗期が出てきてるの」「申し訳ない。相当、困らせているんだろう?」「まあ、そういう年頃だから」園長は、毎年この日には13年前を思い出す。

13年前

夏の日の夕方頃 突然姉、緑が訪ねてきた。両親の葬式にも顔を見せなかったのに、何年ぶりだろう

4つ上の姉は、以前よりも数段老けていて、痩せて弱々しく見えた。姉は、両親の反対も聞かずヤクザ風の男と、駆け落ち同然に家を出ていったきりだ。

「この子を、育ててほしいとだけ言って、ブランケットに包まれた 生後まもない赤ちゃんを手渡すと姉は、すぐでていこうとする」

反射的に、受け取りはしたが「まって、どういうこと?」遅れて、言葉が出てきた。「お願い、育ててほしいの、これは好きにつかっていいから」コロコロバックのほうをみながら、いう。「まって、私と一緒に暮らせない?・・・一緒に育てようよ」急には、うまい言葉がでてこない。それでも、やっと会えてボロボロ状態の姉を、このまま逃すわけにはいかない。


一瞬、姉は驚いた顔をして「こんな私が、一緒にいてもいいの?」涙が、溢れてくる。泣きじゃくりながら、「め、迷惑ばかりかけたのに。」

「いいに、決まってる。」私の目も、涙で潤ってくる。


それからは、二人三脚で姪のミチルを育てようときめた。

お金は、これを使ってとコロコロバックを、開くと帯がかかった札束がぎっしりはいっている。

「?!えっ、な何、」こんな光景、テレビの刑事ドラマでしか、見たことがない。

「私と、駆け落ちしたアイツ、ヤクザでさあ。一緒にいた時に敵対してた組と抗争がおきて。アイツも、巻き込まれて死んじゃったし その時 目の前にあった金庫が開いてて。お金一部だけ頂いてきちゃった。残りは、警察に押収されたみたいだけど」

姉いわく、アイツには苦労ばかりさせられて、死んだって殉職扱いされる訳はなく、退職金だってない。神様がくれたチャンスだと思ったわ。しっかり者の姉の性格は健在だった。


桜は、最近自分の中で形になりつつあるぼんやりした想いを、少しづつ形にしていくことにした。

まずは、大切な家族の緑に打ち明けた。「姉ちゃん、私ね。目標も持たずに今まで 流されて生きてきたような気がするの。姉ちゃんは、自分の想いにいつもまっすぐに、進む姿が羨ましかった。」洗濯物を、干してた手がとまり、桜の方を向くと「私は、今まで皆に迷惑ばかりかけてきたのよ。ヤクザの女になって、いきつく所は刑務所か死だった。こんな、私が羨ましい?」






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