読み聞かせ令嬢の誤算

有沢真尋

第1話 高慢な年下王子様

 そのとてつもなく麗しくいけすかない少年が、私の御主人様となる人でした。


 見事な白金色の髪プラチナブロンドに、けぶるような青の瞳。

 彼は、子どもながらにこの世の欺瞞をシニカルに見通すかのようにその目を細めて――螺旋階段の高所から、傲慢かつ高飛車に言い放ったのです。


家庭教師ガヴァネスなど俺にはいらない。邪魔だ。失せろ」

 私は手にしていたトランクケースの持ち手をぐっと握りしめてから、もう片方の手でスカートを軽く摘んでお辞儀をしました。

 顔にはもちろん、満面の愛想笑い。

「本日よりこちらで働かせていただくエリザベス・コプカットと申します。どうぞ、『リジ―先生』とお呼びください」

 リジ―はエリザベスの愛称。親しみやすいように、三歳下の王子様に名乗りを上げたというのに。


 ハッと鼻で笑われた。

 残忍なまなざしで見下してきながら、御主人様はもう一度言った。


「聞こえなかったのか? 失せろ」

 それが私と第三王子アルバート様との出会いでした(怒)。

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