迷宮都市のカード使い

フラット

冒険の始まり




カードマジック


それは魔法カードと呼ばれるものに内包されている魔法やアイテム、その中にいるクリーチャーと呼ばれる異界のもの達を呼び出す魔法。


それを行使するには高い適性が必要と言われ、さらに行使する際に細かな条件に縛られる物もある。


そんな様々なカードを使ってモンスター達と戦う者達の事をカードマジシャンという。






―――ここが、迷宮都市カリオス


有名な鍛冶師や錬金術師、大手の商会等々。基本何でもそろっている場所だとは聞いていたけど、予想以上だ。街は活気に包まれており、とても賑やかだった。


「やっぱり大陸一大きいダンジョンがある都市は違うな」


ダンジョン―それは冒険者達が一攫千金を狙う場所であり、俺もそのうちの一人だ。


(まずは宿を探さなきゃ)


ここに来るまでに1週間かかったし、馬車に揺られる生活が長かったからか、ちゃんと寝泊まりしたい。本当はもっとやるべきことが沢山あるんだけど、疲れたし今日ぐらい休んでも文句は無いだろう。






「え! 空いている部屋がひとつもない?」


「すまねぇな。ここはすぐに部屋が埋まっちまうんだ。次に空くとしたら……そうだな…………一週間って所かな」


「……そうですか」



しばらくは宿で寝泊まりしながら所属するギルドを探そうと思ってたんだけど…………かれこれ二時間ぐらい探しているが、泊まれそうな場所はなかった。空いている宿を見つけることができても、価格が高すぎて一日分払うだけで財布が空になってしまう場所ばかり。


「まぁ、仕方ないか。先にギルドに入っておこう」







「ごめんね。今は勧誘していないんだ」


「他を当たれや。俺達はガキのお守りはゴメンなんだよ」


「……すまんが無理だ。こっちにはもう凄腕の冒険者が集まってる。それにうちは新人育成なんてやってねぇから、今更新人を募集する意味が無い」


他にもいろんな所を当たったが、この通り全く相手にして貰えない。


ギルドとは、クエストを受注できるところであり、ダンジョンに一緒に行く仲間をギルド内で作るための施設でもある。別にギルドメンバー同士でないとパーティーが組めない訳では無いが、そうすると報酬の分け前、ドロップした素材の所有者などでいざこざが発生しやすい。同じギルド同士に所属しているなら、ギルド内のルールが存在する為、不正や裏切り等の行為が行われにくい。 ダンジョンに入るだけなら、冒険者登録をしている全ての人が可能。しかし、ダンジョン内では常に危険と隣り合わせ。ソロで挑むよりパーティーを組んで戦う方が危険は少なくなる。だから基本ダンジョンに潜る人々はギルドに加入している。


詳しく話を聞くと、この都市は冒険者人口が多いため、人手は十分に足りているらしい。それでもギルドに加入するもの達は殆どがギルド内の人物からの推薦を貰っているのだ。


他にも加入するための試験を行うギルドもあるらしいのだが、そもそも実績がなければ受けることすら難しいそうだ。


「はぁ。まさかここまでうまくいかないことがあるなんて」


それに加えて、迷宮都市を少し甘く見ていたのも原因だろう。これだけ各方面に充実していれば、宿が埋まっていたり価格が高いこともあるだろうし、冒険者も多いからギルドに入れないことだってうなづける。


「だめだだめだ! 落ち込む前にできることをしよう」



「こんにちは」

そうして訪れたのはダンジョン管理センター。ダンジョンに入るために、冒険者は必ずそこで登録を済ませておかなくてはならない。


「はい、こんにちは。こちらダンジョン管理センターです。今回はどのような要件でしょうか?」


「登録に来ました」


「ではここに初めて冒険者登録した場所と名前、年齢の記入をお願い致します」


そう言って渡された紙に記入した。


「ありがとうございます。シグルズ=アルフィーさん、年齢は17歳ですね。それと、カードを見せて頂いてもよろしいですか?」


「勿論です」


僕はそう言って青銅のカードを差し出した。


しばらくすると、


「登録完了です。シグルズアルフィー様。これでいつでもこのダンジョンの探索が可能です」


「はい、ありがとうございます」


「ここからはこのダンジョンについての説明と諸注意です。シグルズ様は既に冒険者ですが、確認も兼ねて基本的なルールから軽く説明する形にさせていただきます。よろしいでしょうか?」


「はい」


「改めまして、私ダンジョン管理職員のセリカです。どうぞよろしくお願いします」


「ではまず一つ目。ダンジョンのモンスターについてです。モンスターは基本一定間隔でダンジョン内に出現し、倒してもしばらくしたらまた出現します。

階層によって出現するモンスターは異なりますが、モンスターが階層を移動することはありませんので、目標の階層に出るモンスターの特徴を抑えて装備を整えたり、パーティーを組むなどして探索、攻略に励んでください」


パーティーか…………

思わず僕は下向きにうなだれ、じっと目を瞑る


「どうかなさいました?」


「 あ、 いえ、なんでもないです」


「続けます。ダンジョンには10階層ごとにフロアボスと呼ばれる特殊モンスターが出現します。基本彼らのようなモンスターはリポップするまでに長い時間を要します。10階層だと1週間に1度しか出現しないので、1度倒されていればその間は出現することはありません。ただしその強さは同じ階層にいるモンスターの比ではありません。充分用心して下さい。また、モンスターの中にある魔石については、カウンターで直接換金を行います。勿論モンスターの素材についても換金できますが、その場合は商会で売るよりも少ない金額になると思ってください」


「2つ目はアーティファクトについてです。ダンジョン攻略を進めていると、稀にアーティファクトが発見されることがあります。アーティファクトはCからSSランクに分かれており、ランクが高い程貴重です。勿論それは発見した人に所有権があります。ただし効果のわかっていないアーティファクトは危険ですので、1度鑑定に出すことをオススメします」


「最後に冒険者ランクについてです。1番ランクの低いものが無印。そして次がブロンズそしてシルバー、ゴールド、プラチナとなります。ランクアップは実績に応じて上がっていきます。とは言え、ダンジョン探索に直接関係はありません。

あくまで力の指標です。ですが、この指標というのは、冒険者がなるべくダンジョンで死なないようにと設定されているものでもあります」


「死なないように、ですか」


「はい。一般にカリオスのダンジョンでは、上層と呼ばれれる範囲までの探索ならブロンズランク、中層はシルバーランク、そして未開拓領域の探索はゴールドランク以上が基準となっています。ただしこれはパーティーを組んでいる場合の話です。パーティーを組んでいない場合は、さっきの指標からひとつ下げた範囲の探索が好ましいです」


なるほど。確かに1人での探索と仲間のいる探索では危険度が全然違う。設定されているものを見せてもらうと、僕のランク―ブロンズランク冒険者は、15階層までが探索推奨ライン、シルバーランクは30階層までが探索推奨ラインになっていた。


(それにしても………50階層より下からは明確な設定がされていない)


それだけ危険なところなのだろう。


「以上で説明は終了です。また何かご不明な点がありましたからなんなりとカウンターまでお越しください」




ーーーーーーーーーーーーーーーーー

恐らく用語が多すぎて何が何だか分からないと思われている方がいらっしゃると思うので、用語の説明をしておきます。(読んでいく中で絶対に知っていないと困るということはありません。)


・冒険者:クエストを受注したり、ダンジョン内のモンスターを討伐し、その素材や魔石を売ることで報酬を受け取ったり、ダンジョン内の眠る品物等によって生計を立てている人々のことを指す。


・ダンジョン:数多くのモンスター達が存在していると共に、アーティファクトと呼ばれるアイテムが眠っている場所でもある。その存在理由について詳しいことは現在まで何も分かっていない。一般的に下層へ行けば行くほどモンスターは手強くなっていく。ただ単純に力が強くなると言うだけでなく、知能が増していたり、特殊な性質を持つものが増えたりする。


・ギルド:ダンジョン管理センターとは異なる。あくまで仲間集めの場所、みたいな捉え方の方がわかりやすいかもしれない。

また有名なギルドに入れば冒険者としての箔も付く。(箔がつくとは言ってますが、あくまで個人の実力の指標はランクです。なんというか凄さのニュアンスが異なります。例えるなら、超大手企業の平社員さんと、あまり名前の知られていない企業の社長さんを比べた場合、どちらもとても凄いですが、大手企業に勤められて凄い、というのと、社長やってて凄いって言うのでニュアンスが違いますよね? そんな感じです)


・ダンジョン管理センター:ダンジョンがある都市に設置されている。主な役割は冒険者登録をしている人の生死をチェックすること、クエストをギルドや個人に発注すること、魔石やモンスターの素材をお金と交換すること等。但しモンスターの素材は商人達に売ることもある。一般的には低級モンスターの素材や、そういった商人とのツテがない人がそこで売る感じです。勿論商人に売った方が色が着く場合が多いです。


たまにこうして足りてない説明を埋めていこうと思います。

(文章の中に入れると僕の力ではどうしてもテンポが悪くなってしまうことを避けられないので………どうしてもっとわかりやすい設定にできなかったんだろうか)




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