ゲームスタート

1stステージ『54番:ラストコール・エンドフェイズvs瀬宮雫』

控室

 異世界『控室』。


「俺様参上ッ!」


 1カメ。

 猛禽のような鋭い目付き。漆黒の少女がかっこいいポーズで着地する。その両隣には、西洋人形のような美少女と日本人形のような美少女が控えめなポーズを決めている。


「俺様参上ッ!!」


 2カメ。

 不吉な双眸の日本人形のような少女が、ぐったりとしている人型の両腕を持ち上げて猫ポーズをさせた。もう反対側では一人独創的なポーズのピエロと、その頭の上にしがみつく白ウサギ。


「俺様参上ッ!!!」


 3カメ。

 少女五人(?)とウサギ(?)の決めポーズ。背後で無駄に上がる爆炎。情念の怪物どもはひとしきり満足したのか、招かれた部屋を見渡す。

 そこそこの広さのコテージだった。キッチン、リビング、寝室、トイレ、バスルームと間取りも充実している。さらには豪華な観葉植物が散見される。窓や扉がコンクリートで埋められているが、それは単にコテージのということだった。

 と、水色のゴスロリ服の少女がさっきから妙にキョロキョロしている。


「どったのメルロ? おトイレならあっちだぜ!」

「ぁ、いぇ、そうではなく⋯⋯⋯⋯もうっ」


 赤くなったゴスロリ少女が手をあたふたさせる。首を傾げる猛禽少女。


「あの、ですね⋯⋯っ、高月さん! 世話役に天使様がついてくれると聞いたけど」


 ほくほく顔で顔を輝かせる。一方、何かを見つけて表情が無に果てる高月さん。無言で観葉植物の一つを指差す。

 訂正、観葉植物ではなかった。

 全身迷彩服の、ちびでぶめがねはげのアブラギッシュなおっさんだった。


「んんwww我が貴殿らの担当天使『クサハエル』ですぞwww役割を持てる美少女ばかりで夢いっぱいですなwww」


 ピエロが叫ぶ。


「きもーーい! おっさんだあ!!」

「んんwww辛辣ですなwww」


 皆、多かれ少なかれ天使という超常存在に幻想を抱いていたみたいだ。気まずい沈黙が舞い降りる。


「おっさんにも優しい子になって欲しいですなwwwそれよりもwww早速競技が始まりますぞwww」

「お、来たか!!」


 高月さんが顔を輝かせる。キャハキャハはしゃぐピエロと、ソファに人型を寝かせる不吉な少女。さっきから大人しい白ウサギとゴスロリ少女が、前に出た高月さんの背中を見る。


「はッ! もちろん一番乗りは俺様だぜ! 別の世界の猛者たちかぁどんな奴が相手なんだろうな!」

「んんwwwでは飛ばしますぞwww」


 クサハエルが指を鳴らすと、うるさいピエロが消えた。


「ありゃりゃ?」

「参加者は神のご意志で決定されますぞwwwんんwww早とちり恥ずかしいですなwww」


 むっとした高月さんが拳を握り締めると同時、不吉な双眸の少女が悲惨な声を上げた。


「エンドフェイズ! 消えた!」


 ばっ、とソファに視線が集まる。マジだった。奇しくも、最初のタイミングで指定されたのが『始まりの門』と『終わりの砂時計』。


「一番ヤバいのが真っ先に突っ込みやがったぜ⋯⋯」


 珍しく、高月さんが動揺する。

 飛ばした張本人であるクサハエルだけが満面の笑顔だった。

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