第34話 復讐5

ポタポタと、樹くんの顔に私の涙が落ちる。樹くんは、その感触すらもう感じられないのだろうか……。


「……はんな……」


樹くんの目が、小さく開いた。樹くん!!


でも、泣きすぎていて声にならなかった。


「泣かないで……」


泣くよ……泣くよ! 私のせいで……!


「……あ……まどかさんに、よく似てる……」


「……え……?」


「下から見ると、まどかさんにそっくりだ……」


樹くんは笑って、また目を閉じた。


そりゃそうだよ。私は……樹くんと樹くんが愛した人の娘だったんだよ……!


閉じられた樹くんの目が開かれることは、二度となかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る