第6話オレンジの口紅②

 オレンジの口紅だけじゃない、鈴川さんの服装も鈴川さんの彼女が勤めるアパレルブランドの服が少しずつ増えていく。

 あーゆー派手な色合いの服は鈴川さんには似合わないんだけどな…………

 いや違う、これはただの嫉妬。

確かに今までのふんわりとしたイメージの装いとは違うけど鈴川さんの容姿の前にはあんまり似合わないタイプの服って少ない、同じゼミの女の子は『いいな~鈴川さん、いろんな服が似合って、すっぴん美人は無理だけど私もせめてダイエットとメイクがんばろ!』とお世辞抜きに手放しで誉めてたもの。


「はぁ……」


 めちゃめちゃでかいため息をつく鈴川さん。


「鈴川さん、どうしたの?」

「原田さん、優しいな~のってあげることないのに」

「石野君、ひどっ、茜ちゃんは確かに優しいけど」


 優しいんじゃなくて、好きなだけだよ。

 でも、鈴川さんがゼミでこういう気を許した振る舞いをしてくれるのは、だいたい石野君と三人でいるときか私と二人のときだよね。


「最近、彼女なんか忙しくてあんまり会ってくれないんだよねぇ~、店では普通に接客してくれるんだけど」

「雑誌モデルとショップ店員掛け持ちだろ?そりゃ忙しいって」

「学生とバイトの掛け持ちだけでもしんどいときあるもんね、社会人の忙しさ理解するのってきっと自分が社会人になったときかもね、でもさみしいのはわかるよ、難しいよね」

「そう、さみしいんだよ~、そうだ!二人ともご飯食べに行こうよ、このまま、一人暮らしの部屋帰るのやだ」

「金曜日の夜は彼女と食べるから無理~」

「あ~、石野君はそうだった、そうだじゃあ茜ちゃん家においでよ~お泊まり会しよ~」

「いいよ、一回自分の家帰って着替え持ってくるね」

「やった~!」


 ああ、やっぱり鈴川さんはまっすぐで魅力的だな。

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