「彼女なんてできるわけないじゃん」と幼馴染に煽られたので、ほんとに彼女を作った結果、日々の生活から余裕がなくなりました。~もう二度と、残念系イケメンなどとは呼ばせない!

深谷花びら大回転

第1話 残念系イケメンとは呼ばせない

真琴まことに彼女なんてできるわけないじゃん! 確かに顔はいいけどそれだけ、他がダメダメのダメだもん! 残念系イケメンだもん! ま、まぁ? あたしなら受け入れられ――』

『俺は身も心もイケメンだッ! その証拠に今日中に――今日中に彼女を作ってやるよ!』


     ***


華美はなみ真琴まこと


 時は一時限目休み。俺は屋上へと来ていた。


 顔だけとか煽ってきやがって……夕奈ゆうなのヤツめ。いくら付き合いが長いからって言って良いことと悪いことがあるだろ! 俺に彼女なんてできない? 残念系イケメン? はッ、彼女の一人や二人、朝飯前なんだよ!


 今朝、幼馴染に言われたことを思い出し、フェンスを握る手に力が入る。


 ガチャリ――。


 と、後ろから安っぽい開閉音が……来たな。


 振り向けばそこには金に近い茶髪のセミロング女子。



「ごめん、待たせちゃったかな?」

「いや、俺も今来たとこだから」



 そう優しく返し、彼女の元へ。


 学園の〝お日さま〟こと、朝陽あさひ日向ひなた。俺に見合うであろう女子二人の内の一人。



「なら良かった。それでウチに何の用?」

「突然だが、俺と付き合ってくれ」

「………………え?」

「愛してるぜ……あ、さ、ひ♡」



 前髪をかきあげ、仕留めのウィンク。これで朝陽は完全に落ちるだろう。



「…………あ、あはは…………ごめん、無理」

「――な、どうして⁉」

「どうしてって……華美君ってカッコいいけど、中身が……さ? ダメダメのダメじゃん? だからかな」


     ***


 時は二時限目休み。さっきと同じく屋上で、今度は黒髪ロング女子…………学園の〝お月さま〟こと、月見山つきみや花咲里かざりと対面中。



「月見山、どうやら俺は君に惚れてしまったらしい…………だから、俺と付き合え」

「死ねば?」

「……ふ、そう照れるな。気持ちに正直でいいんだ…………さ、早くイエスと答えてくれ」

「嫌よ」

「……お前もかよ」

「は? それどういう意味? 私以外の誰かにも告ってたってこと?」

「あ、いや、そんなことは――」

「手当たり次第って、ほんと見下げ果てたクズね。これだから、外見しか取り柄がない人は」


     ***


 放課後。俺の下駄箱に一通の手紙が。


『華美さんに伝えたいことがあります。屋上で待っています』


 ……………………。


真琴まことに彼女なんてできるわけないじゃん! 確かに顔はいいけどそれだけ、他がダメダメのダメだもん! 残念系イケメンだもん!』


 …………この際だ、誰だろうと構わない。


 俺は三度、屋上へと出向いた。


 待っていたのは俺と同じクラスで隣の席の青空あおぞら雨音あまねだ。肩にかかるかかからないかくらいに伸びた黒髪、制服を着崩したりはしておらず、模範的という言葉が似合う女子。朝陽や月見山と比べて影が薄いが……。



「は、華美さん。あなたの、ことが、そ、その、す……好きです。わ、私と、つ、付き合って、ください!」


 ――――――――――――。


『おい夕奈。俺、彼女できたぞ』

『え、嘘でしょ⁉』

『マジだ! 同じクラスの青空、知ってるだろ?』


 すぐに既読がついたものの、返信はなかった。


 夕奈のヤツ、さぞ悔しがっているんだろうな。あれだけ豪語しておいて外してるんだから……これで、俺が残念系イケメンなんかじゃなく、ハイスペックイケメンだと再認識してくれるだろう。


 しかし……………………これからどうしたものだろうか?


朝陽日向


 華美君、顔はタイプなんだけどねぇ……いかんせん性格が。でも、ウチ好みに矯正できれば理想の男子になる。さらに言えば校内でのウチの地位も絶対的に……ふふ、ありね。


月見山花咲里


 もう! 真琴君のばかばかばかぁ……今までずっと他人行儀で冷たくしてたくせに、急に手のひら返すなんて。私を寂しくさせた分、真琴君にも冷たくするからね! でも……私の気が済んだらその時は――〝約束〟を果たそうね。


夕凪ゆうなぎ夕奈ゆうな


 ……………………真琴なんて…………もう知らない。

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