第34話 花火

今日は花火大会の日

俺はチカと一緒に会場の河川敷に来ていた。

「ねぇ、ユウちゃんりんご飴食べよ♪」

「りょーかい、こら走るなよ、浴衣なんだからこけるぞ。」

「だいじょーぶだよ。あっ!」

チカはこけそうになるが俺が支える。

「ほら言わんこっちゃない。」

「ごめんね。」

「ほらゆっくり行くぞ。」

俺は手を差し出す。

「うん♪」

チカは腕を組み嬉しそうに屋台を回る。


「おやっさん見ましたか?」

「ああ、いい雰囲気だな。」

シンとおやっさんは二人の後をつけていた。


地元の花火大会は友好関係のある組が屋台を仕切っている。

今年は人手が足りなく、金子組から援軍を出したのだが、その分、組員達が少なくなり、いつも開催していた一杯会 は中止となり、暇になったユウヤとチカは二人で計画して花火大会を見物しに来ていたのだ。


「はい♪あーんして。」

チカはたこ焼きを俺に食べさせてくれる。

「あつ、でも美味しいよ。」

「じゃあ私にもちょうだい。」

「ほい、あーん。」

「あ~ん♪」

俺達は互いに食べさせてあっていた。


「チカ?何してるの?」

バカップルを冷めた目でみる、サチとユカリ、そして、クラスメイトのケンゴとヤスシがいた。

「サチにユカリ!これはちょっと・・・」

チカは顔を真っ赤に染めて恥ずかしがっていた。

「えーと、サチちゃんとユカリちゃんだよね。

二人とも浴衣似合っているよ。」

「あ、ありがとうございます。」

サチは褒められて顔を赤くする。

しかし、後ろにいる男の子は面白くない顔をしていた。


「なあ、チカさんも一緒にまわらないか?」

ヤスシが提案してくる。

「えっ、行かないよ、私はユウちゃんとまわってるし。」

「そんなおっさん置いてさ俺達と行こうぜ、サチさんやユカリさんも一緒なんだよ。

こっちの方が楽しいに決まっているじゃん。」

ヤスシは粘るが・・・


「ユウちゃんを悪くいう人と一緒にいて楽しいことなんてないよ。私は絶対に行かないから。」

チカは不機嫌になり、俺の腕を掴んでいる。

「あーボクよ、チカちゃんこうなったら長いからね、あきらめてくれるかな?」

「誰がボクだよ!おっさん!中学生に手を出すような変態は警察に捕まればいいんだ!」

ヤスシは其処まで言うと屋台の兄さんに頭を掴まれる。

「ボクよ、どこのガキか知らんが、うちの兄貴分を脅すとはいい度胸だな。」

こめかみに血管を浮かばせながら、ヤスシを睨み付けている。

「ヒィィィィ!!」

ヤスシは小便を漏らす・・・


「はぁ、お前らやりすぎだ、ボクよ、悪いことは言わん、一度家に帰れ。そのままじゃ遊べんだろ?」

ヤスシは自分が漏らしていることに気付いて、泣きながら走り去っていった。


俺はタメ息をつきつつ、名刺にフリーパスと書き込み、名刺を差し出す、

「サチちゃん、ユカリちゃん、あと其処のボクよ、悪いことしたね、これは俺の名刺だ、これを見せたら屋台で無料で食べれるから好きなだけ食べてくれ。」

「いえ、そんな悪いです。」

サチは手を振り断ろうとするが、

「何、気持ちだよ、折角の遊びを台無しにしたんだ、せめてものお詫びだよ。」

俺はサチに受け取らせて、チカを連れて三人から離れた。


「チカちゃん、みんなと一緒に行かなくてよかったのかい?」

「いいんです。みんなとは学校で会えますし。」

俺はチカと一緒に山の中腹にある神社に向かった。

此処は俺とチカが昔から花火を見ている場所だ。


昔からの思い出があった為、最近俺が買い取って立ち入り禁止にしているから誰も来ることはない、神社自体、改築をしているし、近くに別荘も建てていた。

「たまや~」

花火が上がり出し、俺とチカは二人のじかんを楽しむのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る