第26話 ホワイトデー 前編

ホワイトデー

そう、男が女に貢ぎ物を献上する日、

それは金子組では当然の行為だった。


「はぁ、今月ヤバイ、財布に一万しかない。」

「何に使ったんだよ。」

「アズミさんへのお返し・・・」

「お前、あの人にチョコもらったのか!」

「ああ、でも、仕方なかったんだ、ゼロ個はいやだぁー」

「それで搾取されたら世話ないだろ?」

「ここまでとは知らなかったんだ・・・」

こんな様子でほとんどの組員が彼女や悪意(?)でチョコをくれた相手に搾取されていた。


「ほい、チカちゃん、お返しのクッキーだよ。」

「ありがとう、ゆうちゃん♪」

俺はチカの部屋でお返しを渡していた。

組関係の女性と違い、チカはお返しに多額の要求はしてこない。

そして、この関係の元、今年は組内に多額のお返し禁止令を発動していた。

好きなら金額じゃないだろう!と言う思いからだ。

男達の絶大な支持とチカの支えで一応禁止令は効果を発揮しており、倍返し、三倍返し内で収まっていた。


「ねえ、ゆうちゃん。ちょっと相談があるんだけど・・・」

「どうした?」

「あのね、バレンタインの時、学校で義理チョコ配ったんだけど、こんなお返しがカバンに入っていたの・・・」

そこにはブランド物の女性用下着が入っていた。

「な、なにこれ?」

「私もわかんない、気がついたら入っていて・・・私、気持ち悪くて。」

「いや、これは気持ち悪くて当然だよ。相手は誰かわかるの?」

「手紙が入ってたからわかると思うけど・・・」

「読んでないの?」

「気持ち悪くて触りたくもないよ。」

「仕方ない、俺が見てもいい?」

「お願いできるかな?」

「わかったよ。」

俺は手紙を読むが内容は気持ち悪いポエムばかりで読むのが嫌になったが幸いクラスと名前はわかった。

「チカちゃん、1組の小川ハジメというヤツらしいけど。」

「小川くん?渡したかな?クラスメイトなのは間違いないけど・・・」

「どんなヤツなの?」

「うーん、あまり印象は無いんだけど、勉強も運動もあまり出来てなくて、友人もいるのかな?あまり誰かと話しているところを見た気がしないかな?それぐらいしかわからない。」

「それぐらいの相手にこんな下着わたすか?結構高そうだよね?」

「うん、高いと思う。でも、私話したことと合ったかなぁぐらいだよ。」

「うーん、学校内で何か合ったらいけないからな、俺の方で対処はしておくよ。」

「ゆうちゃん。私怖いよ。」

「暫くは送り迎えするし、学校内に俺のクルマを置けるようにするから其処に逃げて来て。」

「うん、お願いします。」


俺はチカの部屋を出たあと組の若手に声をかける。

「松木、田辺、お前らチカちゃんの学校に弟分いたよな。」

「はい、いますが。」

「仕事だ、そいつらにチカちゃんを護衛させろ。」

「護衛ですか?」

「小川ハジメとかいうヤツが気持ち悪い物をチカちゃんに送り届けてきた。学校内で何か合ったら手が出しづらいからな、同じ中学生に頼みたい。」

「ユウヤさん、そいつらの金子組、参入は出来ますか?」

「盃もらえてない俺が言うのも何だが成功したら入れるよう手配する。」

「わかりました。直ちに手配します。」

「任した。」


「シン!いるか!」

バレンタインの大量のお返しをしたくなくて押し入れに隠れていたシンが出てくる。

「ちょっとこれを返却に行くから付き合ってくれ。」

「あいよ。」

俺とシン、そして、チカはハジメの家を訪ねる。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る