第23話 授業参観後

「これはユウヤさん、いつもお世話になっております。」

「これは酒屋の西条さん、息子さんがこのクラスに?」

「そうなんですよ、しかし、ユウヤさんは何故ここに?」

「おやっさんの代わりに来たんですよ。」

「なるほど、息子のフナヤとチカさんが同じクラスと言うのは奇遇ですなぁ。」

「そうですね、今日はよろしくお願いしますね。」

俺は酒屋の西条さんと軽く会話をしていたら、授業が始まった。

授業は積極的に発表するチカに周りは驚いていた。

そもそも、チカは奥手であまり発表をしないのだが、今日は進んで発表を行う。そのお陰で目立っており、そして、今日のチカは薄化粧もバッチリ、周囲の男は見とれていた。

その中には酒屋の息子のフナヤも入っていた。


授業が終わり、その日はそのまま帰宅時間になる。

「ゆうちゃん、お待たせ。帰ろ♪」

「あの、チカさん!」

フナヤは勇気を持って話かける。

「うん?あっ西条くんどうしたの?」

「これから暇ですか?」

さっきまでの笑顔が消え、

「ううん、今日はこれからデートだから忙しいの。ねっ、ゆうちゃん♪」

「デートじゃないだろ、これから買い物に行くだけだよ。」

「それをデートっていうの。あっ、映画も見ようね。」

「何かやってた?」

「前に話してた洋画の大作が公開されてたよ。」

「ホント?じゃあついでに見るか、何時から?」

「レイトだから9時かな?」

「ちょっと遅いな、おやっさんに連絡しておくか。」

「うん♪」

「ちょっと、待ったーーー!」

「あっ、西条くん、まだいたんだ。」

「チカさんはそんなに遅くまでそんな男と一緒にいたらダメです!」

「そんな男?私が誰といても西条くんに関係ないよね?」

チカは明らかに不機嫌だった。

「だって、明らかに怪しいだろ、なんで父兄参観に親と違う人が来てるんだよ!」

「お父さんが代理を頼んだから。」

「だいたい、こんなおっさんの何がいいんだよ!」

「ねぇ、西条くん。私の大事な人を罵倒するのは止めてくれないかな?」

「えっ・・・」

「あなたに私の大切な人を罵倒する権利があるの?私はそんな人と関わりたくないよ。二度と話し掛けないでもらえるかな。」

そう言うとチカはフナヤを無視して。

「ゆうちゃんごめんね、さぁ行こ。」

「いいのか?」

「良いよ、ゆうちゃんを悪くいう人なんて嫌いだから。」

チカは俺の手を引き、外に行こうとする。

「ま、待ってください。ユウヤさん。」

不意に俺が呼び止められ、振り返る。

「あっ、西条さんどうしました?」

「息子が失礼な事を言ったようで・・・」

「あーもうチカちゃんに近寄らさない方がいいですよ。凄く怒ってますから。」

「・・・申し訳ありません。」

「俺はいいですから、ガキの言うことにいちいち反応出来ませんし。」

「ガキだと!」

「止めないか!」

「親父なんで止めるんだよらこんな中学生に手を出す変態通報すればいいじゃないか!」

「・・・はぁ、西条さん、さすがにハッキリ侮辱されると黙っていられなくなるんですが。」

「すいません、すいません!フナヤお前も謝れ!」

「なんでだよ!」

「あまり賢くないみたいですね、どうやら西条さんとの付き合い方も変えた方がよさそうだ。」

「い、いえ、それはちょっとお待ちください、必ず謝罪に伺いますので。」

「おやっさんを含めて俺達が納得出来るようにしておいてくださいね。」

「・・・はい、申し訳ありませんでした。・・・こい!フナヤ、こい!お前のせいで大変な事になったじゃないか!!」

「おやじ!痛いって、耳引っ張るなよ!」

フナヤは、父親に連れられ去っていった。


「騒がしいやつだ。」

「そうだね、ユウヤさん。この後、どうするんですか?」

「この後はチカとショッピングに行って映画を・・・ってユカリちゃん?」

「チカじゃなくて、私と行きません?」

「はは、ごめんね。チカちゃんと約束してるからね。」

「じゃあ、せめてみんなで・・・」

「行ってもいいけど、映画がレイトだからだいぶ遅くなるよ。」

「えっ?」

「さすがにみんなを連れては言い訳が見つからないよ。」

「チ、チカはいいんですか?」

「チカちゃんは親の許可とるしね。君達の親の許可まではもらえないでしょ?」

「そうですけど・・・」

「ユカリまだあきらめてなかったの!ゆうちゃんは私のだからね。」

「お父さんの許可とるなんて、チカずるいよぉ~」

「お父さんはゆうちゃんと一緒ならすぐ許可くれるよ。」

「とったの?」

「まだだけど、ちょっと待って。」


チカはおやっさんに電話する。

「お父さん、今日、ゆうちゃんと一緒に映画のレイト見てきていい?うん、11時ぐらいまではかかるよ。ゆうちゃんに変わるね。」

俺は電話を受け取る。

「電話をかわりました。」

「ユウヤ、わかってるんだろうな!」

「ええ、今日は少し遅くなりますが、日付が変わるまでには帰りますよ。」

「何を言ってるんだ!明日は土曜日なんだぞ!1泊ぐらいしてこい!」

「何を言ってるんですか!ちゃんと帰りますって!」

「ちゃんと帰るなって言ってるんだよ!お泊まりしてこいよ、映画館の近くに立派なホテルがあるだろ?そこに泊まってこい。これは命令だ!」

「ちょっと、命令なんて卑怯ですよ!」

「あーーー!聞こえない!泊まらずに帰ってきたら倉田の訓練参加決定だからな!じゃあな~」

電話が切れた・・・


「お父さん、許可くれた?」

「許可はくれたけど・・・」

「どうしたの?」

「泊まって帰ってこいって、言われた・・・」

「えっ、それって・・・」

「まあ、違う部屋をとればいいだけだから、気にしないで。」

「いや。ゆうちゃんと同じ部屋がいい。」

「いやいや、不味いでしょ。」

「そうだよ、チカ。ダメだよ同じ部屋なんて間違いがあったらどうするの!」

「間違いじゃないからいいもん♪」

「御両親が悲しむよ。」

「むしろ、喜ぶと思うんだ~」

「はぁ、わかったよ、同じ部屋だね。予約とるから。」

俺はホテルを予約する。

「ユウヤさん!チカに何をする気ですか!」

「ユカリちゃん、何もしないよ。ただ、同じ部屋なだけだから。」

「フケツです!」

「ユカリ、私とゆうちゃんの間に入らないでくれるかな?」

「チカ、ダメだよ私達まだ中学生だよ。」

「ユカリ、私は先に大人になるね。」

「チカちゃん何もしないからね!」

別れ際までワイワイ騒ぐ、三人にアタマを抱えながら、俺とチカは二人で映画館に向かった。

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