兄姉たちの結婚・婚約と幼少期

 ニュルンベルク城伯フリードリヒ5世の次男フリードリヒとして生まれた訳だが、ホーエンツォレルン家にて過ごしていく間に、我が家にも色々と変化が訪れていた。

 大きな変化は兄弟の結婚である。

 親子ほど年の離れた長女のベアトリクスは、オーストリア公アルブレヒト3世の継室として嫁ぎ、次女のエリーザベトは1374年にプファルツ選帝侯ループレヒト3世に嫁いでいた。

 二人とも、私が幼い時に嫁いでしまっているが、有力諸侯の妻になっているので、我が家と父の帝国における影響力は高まっている。

 兄のヨハンも、1375年に神聖ローマ皇帝カール4世の娘であるマルガレータ皇女と婚約した。これは、カール4世が信頼する重臣である父フリードリヒ5世と勢力を拡大するホーエンツォレルン家を取り込まんとする意図が見受けられる。兄も6歳で皇女と婚約することになるとは、御大尽様である。

 兄の皇女との婚約は決まったものの、私の婚約などはちっとも決まっていない。次男だから仕方ないが、結婚相手を自由に選べるのは強みとも言える。


 父フリードリヒ5世の息子は、兄と私しかいないので、2歳しか年が離れていないことから、殆ど一緒に過ごしていた。そのため、兄弟仲は良好である。

 神聖ローマ皇帝カール4世の重臣として貢献している父は、私たち兄弟に多くの教育の機会を与えてくれていた。鍛錬や学問の師を揃えてくれたのだ。父が有能な経営手腕で蓄えた財で雇った者たちである。

 父が私たちに、教育機会を与えてくれるのも、父としては私たち兄弟がカール4世の息子たちの下で取り立てられるのを望んでいるのだろう。父がカール4世の重臣となったのと同じ様に。

 史実だと、ヨハンとフリードリヒの兄弟は、それぞれヴェンツェルとジギスムントに取り立てられ、重臣として遇されている。ヨハンもフリードリヒも父のフリードリヒ5世の様に優れていたとは言い難いが。



 兄と共に鍛錬に励む日々の中で、剣の稽古をしていた。兄の方が2歳早く生まれているため、私よりも兄の方が体格が優れていた。

 そのため、剣の稽古でも兄の方が強い。それでも、騎士たちからすれば、児戯に等しいのは仕方の無いことであった。


「フリードリヒ、父上にギリシア語を学びたいと願ったそうだな」


 剣の稽古を終えた後、兄と勉学の話題になったところ、私が父に願った話が上がる。


「えぇ、父上にギリシア語を学びたいと願いましたが、駄目だと申されました。

 父上は私にハンガリー語を学ばせたい様で、ハンガリー語の教師を付けてくださるそうだよ」


 私がギリシア語を学びたいと言う願いに対して、父はハンガリー語を身に着ける様にと命じられた。

 父の思惑としては、ハンガリー王になったジギスムントに近付けたいのだろう。

 1378年にカール4世が崩御したことで、ルクセンブルク家宗家の家長は、ローマ王にしてボヘミア王のヴェンツェルが継承している。

 私たち兄弟は、ルクセンブルク家に仕えることが出来る様に、外国語はボヘミア語を学ばさせられていた。


「フリードリヒは、ハンガリー語か。父上はフリードリヒをジギスムント王の下へ送るつもりだろうか。俺は宮廷儀礼の時間が増えるらしい」


 兄は宮廷儀礼の学習時間が増えるそうだ。ヴェンツェル王の異母妹のマルガレータと婚約しており、ヴェンツェル王の義弟となることが決まっている。父は、兄に宮廷儀礼を身に着けさせて、プラハの宮廷へ送り込むつもりなのだろう。


「父上は、私がハンガリー語を身に着ければ、ギリシア語の教師を付けて下さるとは言ってくださったけど、兄上ほどでは無いが宮廷儀礼などの勉学もあるから厳しいな」


 父上はハンガリー語を身に着ければ、ギリシア語を学ばせてくれると言ってくれたが、かなり厳しい。剣術や馬術などの武術の稽古、言語や貴族として必要な教養などの勉強など学ばなければならないことが多い。

 中世ヨーロッパは文字を満足に読み書き出来ない貴族もいるが、父は自身の能力で皇帝の信を勝ち取った様な人物なので、私たちの教育に力を入れているのだ。


「何で、ギリシア語を学ぼうと思ったんだ?」


 兄にギリシア語を学ぼうと思った理由を問われる。


「ビザンティン帝国はオスマン帝国に追い込まれており、風前の灯だから、ビザンティン帝国の優秀な人材や知識を手に入れる良い機会だと思ったんだよ」


 私が、風前の灯であるビザンティン帝国から技術者や学者を引き抜くチャンスだと言うと、兄は「なるほどなぁ」と納得してくれていた。

 東方の方が技術や学問が発達しており、東方と取引をしているヴェネツィアは大いに栄えている。東方の技術などを得たイタリア半年は西欧でも大いに発展していることから、技術的に遅れているドイツ圏で領国を富ませるならば、ビザンティン帝国から亡命を希望する技術者や学問を招聘するのが良いだろう。

 父にも、その話をしたところ、考え込みながら検討するとのことであった。


 転生した私の少年時代は、武術の稽古と勉学に費やされるのであった。


 内政チート?異端審問官がいる時代にする訳無いじゃないですか。魔女狩りが流行るのはもう少し後とは言え、変なことして悪魔憑きとか言われて殺されたく無い。

 内政チートをするのは、領地を手に入れてからですよ。

 

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