第1-21話 第二回 私の改造計画会議が先輩達をも巻き込んで開催される

「さて、第二回菊ちゃん改造計画会議を開始したいと思いまーす!」

 パチパチパチ、と手を叩く音が、なー坊、えーさん、そして追加で二つ。

「なんで先輩たちも巻き込んでるんだよ!?」

「いやあ、面白そうだよねぇ。変身計画いいじゃなーい」

そう言ったのは今日もジャージにエプロン姿の新田先輩。

「隠れオタクの血が騒ぐな」

何やら物騒なことを言っているのは一見クールビューティな吉永先輩だ。

第二回私の改造計画会議は何故か絵画部の部室で行われていた。

……まだ仮入部だというのに良いのか? と内心思いつつ。

「前回の会議で、髪の毛、制服、靴下に小物類を直すという案がでましたね」

なー坊の発言を工芸室のホワイトボードにさらさらと書いていく、えーさん。

「あと、菊ちゃんの文房具を可愛くしようという案もありましたぜ、なー坊」

「そうだったね。あとはレターセットだね」

「いろいろ買うみたいだけど、お金は大丈夫なのかい?」

心配そうな吉永先輩

「あ、大丈夫です。そこらへんは親を説得しました。あとお年玉やお小遣いをちゃんと貯金しているのであまり親の負担になるようならそこからも支出しようと思っています」

しっかりしているねえ、と新田先輩が言う。

「でも、なるべく安く、いいものをそろえたいよね。何か案ある?」

「フリマを利用するのはどうだい?」

吉永先輩が提案した。

「センスが必要だが、安くいろいろなものが手に入るよ。これから夏になっていくから、小物類……特に、冬春物の手袋、マフラーの類なら数百円で投げ売っていると思うよ」

「学生鞄をそのまま使うんじゃなくて、可愛いサブバックを買ったら? バッグも千円くらいで手に入るよぉ」

吉永先輩の言葉を受けて、新田先輩も提案を重ねる。

「靴下は難しいかもしれないが、たまに文房具なんかもでているぞ」

魅惑的な言葉が続く。

「へぇ、いいですね。ちなみに大きなフリマってどこでやってるんですか?」

「オタクの聖地の一つ、池袋。西口広場でたまに日曜日にやってるよ。イベントに行く日がフリマに当たるか調べてあげるよ。そうしたらついでで行けるだろう?」

テキパキと物事がきまっていく。

「髪の毛はどこでやってもらう?」

「私が行ってる美容室でいいかな?」

麗ちゃんも行ってるんだけど、となー坊に言われて彼女の険しい眼差しを思い出した。

「別に構わないが……どんな風に切ってもらえばいいと思う?」

「うーん、カットでどうにか、というより菊ちゃん、ぼさぼさの髪だから……縮毛矯正かけるのはどうかな」

「しゅくもうきょうせい」

「ストレートパーマの強力版みたいなやつ。髪さらっさらになるらしいよ。シャンプーのCMに出てるモデルみたいに」

「へー」

髪だけ変えてもモデルみたいにはならないだろうと思いつつ、相槌を打つ。

「髪は女の命だからね。一番大事だよ。さっそく今日行きますか」

「おー、そりゃいいな……って、今日!?」

驚きすぎて唖然としていると、なー坊はさっさと財布から美容室のショップカードを取り出し、スマホで電話をかけ始めた。

「もしもし、お忙しい時間に失礼しま……あ、ゆうさん? あのねー、友達の髪を綺麗にして欲しいんだ……うん。そうイメチェン」

最初は丁寧語だったが、どうやら電話口に出たのが親しい美容師だったらしく、なー坊はくだけた口調になっている。

「さくさく決まっていくね。いい感じだ」

吉永先輩がうんうん、と満足げに頷いた。

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