第21話 思いを背中に 気持ちを足に
店の外に出てみると人ごみで前が見えなくなるくらいに人が集まっていた。
「まだ警察は来てねーみたいだから行くなら今しかない!」
「ゆーとちゃんこっち!」
俊を先頭に僕達は裏路地へと入り、狭い道をひたすら走った。
「ついた! この階段を上がれば屋上に行けるはず!」
「でもドアに鍵が掛けられてるみたいね」
「このビルってもう使われてねーんだっけ? 壊すか」
光太郎がドアを思いっきり蹴るがドアは鈍い音をあげただけで開かなかった。
「だめか」
「なぁみんな、ちょっと小銭貸して。後誰かハンカチ持ってない?」
「あ、じゃあ私の使ってなのだ」
苺のハンカチに皆から集めた小銭を入れ袋状にした。そして僕はそれを思いっきり振りかぶり何度かドアのガラスへとぶつける。ガラスは大きな音を鳴らしながら穴をあけた。
僕はその穴から腕を入れドアの鍵を開けた。
「完璧!」
「ゆーとよく知ってたね」
「ドアの開け方とか、窓の壊しかたとか調べまくったからな。理由は……言わなくても分かるだろ?」
「ほんと零菜ちゃんの事大好きだね」
「当たり前。さぁ行こうぜ」
僕達は階段を駆け上がっていく。
「階段長くないー?」
「わしもうだめかも……」
「苺ちゃん大丈夫?」
「吐きそう……」
「俊ちゃん酒弱すぎ」
「ゆーとおんぶー」
「元気なの俺と光太郎と桃花だけかよ……」
「桃花ちゃん! 他の奴ら任せたわ! 俺はゆーとちゃんと先に行ってる!」
「分かった!」
「行くぞ!」
「おっけ」
「悠翔君!」
桃花の声にペースを上げようとしていた足が止まる。振り返ると桃花は僕の方を真っすぐとみていた。
「悠翔君! 頑張って!」
「うん!」
僕と光太郎は屋上を目指し再び駆け出した
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