第47話:下村君の最後と泉堂さんの献身的な姿

 事情を話し、救急から入り、緩和ケアの病室へ、3人がたどり着くと、もう虫の息だった。泉堂さんが、下村の手を握り、下村さんと声をかけると、うっすらと目を開けて、笑顔になった気がした。死んじゃダメと言い、抱き着いた。すると看護婦さんが笑っているわと言った。


 そして、泉堂さんに抱かれる老人のようにして亡くなった。3人とも流れる涙をぬぐおうともせずに、立ちすくんでいた。そして、少しして、宮入が、亡き、下村君に合掌と言った。それでも泉堂さんは、あきらめきれず、下村を抱きしめて離そうとはしなかった。


 それを見て宮入が、泉堂さんに、よくやった。きっと下村は、君に抱かれて天国にものぼる気持ちで、旅だったよと言うと、泉堂さんの目から、涙が流れ落ち、抱いていた下村の亡骸を手放し、看護婦さんに渡した。その姿をみて宮入が、偉いと言って泉堂さんを抱きしめた。


 すると、その声を聞き、泉堂さんが、人目もはばからず、大声で、小さな、子供のように、泣き叫んだ。そして、下村君は、天に召されたのねと、あきらめきれない様子で言った。その光景を見ていた友人たちも看護婦さんたちも涙にくれていた。その後、宮入が、看護婦さんに、遺体の処分の方法を聞いた。


 まず、先生に死亡診断書を書いてもらい、役場に死亡届けを出し、東京都内にお住まいですかと聞かれ、えーと答えると斎場で荼毘に伏してもらう事が先決でですねと言った。病院で紹介してもらった斎場で、下村の遺体を荼毘にふしてもらい吉沢さんと泉堂さんと宮入の3人で遺骨を骨壺に入れた。


 そこで、経理へ行き、下村のクレジットカードで、かかった費用を精算してもらい領収書をもらった。その後、泉堂さんと吉沢さんにも手伝ってもらうことにした。病室の下村の備品を探して、大きな袋に詰め込んだ。その他の故人の備品類もまとめた。


 2時間後、病室の故人の品物を全部、集めた。その後、宮入さんが自分の車に女性2人を乗せてホームセンターへ行き大きな袋と段ボール箱を買った。病室に戻り備品を全て詰め込み車のトランクに入れた。そして、世話になった、先生や看護婦さんたちにお礼を言って病院を出た。


 車で、泉堂さんの家に送って、八王子の宮入の自宅に帰り、吉沢さんと別れ、軽く食事をして、朝早かったのでシャワーを浴びて、20時過ぎには、床に入り眠りについた。翌朝7時に起き、朝食後、泉堂さんと吉沢さんに八王子の駅に10時に来てと連絡した。


 10時に八王子駅で集合し、宮入の家に入り、リビングイン下村の残した書類を出した。すると、遺書と書いた便せんが見つかった。それを見ると、いままで、お世話にありがとう。特に、宮入と泉堂さんには、苦労をかけたと書いてあった。


 私には、子供いないして、以前、妻もなくしているので天涯孤独である、そこで、残った財産を世話になった宮入と泉堂さんに半分ずつに分けて欲しいと書いてあった。そして、遺骨は、やっぱり、故郷、辰野の先祖と同じ墓地に埋葬していただきたい。


 また、以前の実家は、売るなり、昔の仲間たちで使うなりして、うまく、やってくださいと書いてあった。遺産は、多いので、吉沢さんにも、分けてあげてください。きっと心優しい宮入君だから宜しく頼みます。今まで、お世話になり、本当にありがとうございましたと締めくくってあった。


 遺産を調べ始めると、自宅の土地と建物権利書、H、N、MB、MS、MZ、SB、RT、RS銀行、8銀行の通帳があり、通帳を見ると、H銀行からクレジットカードの引き落としが行われているのが分かった。総合計が8800万円あった。


 その他、1つの銀行に、ロッカーを借りていて、金とダイヤモンドなどの宝石の総額、1400万円の総合計1億円あまりと分かった。これだけあれば、3等分しましょうと言うと、3人が了解した。とりあえず3等分して、吉沢さんと泉堂さんに3千万円を振り込むことにすると宮入が言った。


 その後、クレジットカードの引き下ろされるH銀行の残金と銀行のロッカーを借りて金とダイヤモンドなどの宝石を換金してくると宮入が話した。辰野の家の事も含めて、この考えで良いかなと宮入が、女性たちに言うと、お願いしますと言った。

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