第22話:吉沢さんの家探しと下村の奥さんの死

 翌10日、9時半に吉沢さんから電話が入りホテルで待ち合わせた。徒歩で八王子駅近くの不動産屋に入り駅から10分以内のマンションの情報を調べてもらった。すると4軒、該当する物件があるというので不動産屋と一緒に車で案内してもらい、見ると、2件が候補となり1軒は、国道沿いで騒音がありそう。


 もう一つは、繁華街の一角で、そちらの方が良さそうなので決めた。このDSマンションは、1LDKで34平米,築15年で12階建ての3階の部屋で、家賃が89000円と管理費9000円の計95000円だった。JR八王子駅まで徒歩5分、京王八王子駅まで徒歩8分と書いてあった。


 確かに便利な場所であった。その後、賃貸の契約書にハンコをついて2014年12月1日から入居する契約を交わした。これで13時前に全て終了して近くのレストランで昼食を食べて入居が楽しみだわと吉沢さんが喜んでいた。その話を聞き、今後は、自分の事は自分でやれよと、宮入が言った。


「わかっているわよと、あんまり迷惑かけないからと言った」

「しかし、その言いつけは、すぐに破られた」

「というのは、12月1日、午後、13時過ぎに、吉沢さんから電話が入りホームセンターにつき合ってくれないと言う電話が入った」

「仕方なく、車で迎えに行き、ホームセンターに出かけた」


「吉沢さんが、東京の冬が、暖かいのが一番、良いと感じてるらしい」

「このマンションではインターネットも使え好き音楽が聞けると喜んだ」

「太陽が上がり10時過ぎると晴れてる日は,暖房いらずで、自分の車を置き必要な商品を買い込み、軽トラックで彼女のマンションに搬入した」


「買ってきた品物を設置し軽トラから自分の車に交換し家の着いたのが17時」

そして、しばらくして2015年があけた。2月3日、下村から電話が入り女房が亡くなったと連絡してきた。事情を聞くと2月3日、夕方、買い物のため辰野のスーパーに行き、帰ってくる時、車に、はねられ死んだと語った。


「道路が、凍っていて、大型車が、滑り、かなりのスピードでぶつかった様だ」

「救急車で運ばれたが間に合わなかったようで、下村は、冷静さを失っていた」

「そして、こんな寒い所にいたくないと言い、貯めた金があるから、辰野を出て東京の暖かいマンションに住みたいと言いだした」


「これに対し、お前もかと言い、勘弁してくれよと語るとマンション探しも自分でやるから迷惑かけないと言った」

「できたら葬儀に参列欲しいと言われ、もちろん参列するよと約束した」

そして電話を切った。2日後、2月8日、辰野の公民館で10時半から葬儀をすると電話が入り、詳細はメールで送ると言い届いた。


 宮入は、7時半発のあずさ1号を予約し乗った。上諏訪で飯田線に乗り換えて辰野に10時前に到着。タクシーで下村の家に向かった。そして、下村に会い、哀悼の意をを表した。その後、下村の車で公民館に行き葬儀が始まった。さすがに下村が、町の顔役で50人以上の町民が来ていた。


 今晩、泊まって行けよと言われ帰るとは言えず了解した。そして14時には葬儀が終わりお墓まで言ってお参りしてきた。その日の晩、佐藤が気を利かせて、仲間達に声をかけて飲み会を開いた。その席で下村が、俺は、外で働くだけで、家庭内のことは全部、女房に任せっきりで子供達には厳しく接した。


「その他、転勤続きで女房、子供に、随分迷惑をかけたと言い涙を隠さなかった」

「辰野は,知り合いばかりで、そろそろ息苦しくなってきたと本音を漏らした」

「だから近いうちにもっと暖かい所へ行って1人暮らしを始めたいと言い出した」

「これを聞いて、周りのみんなは、驚いた」


 下村は責任感が強く、リーダーシップを発揮し町のために貢献してきた。だから、まさか辰野を出たいと聞くとは、思っていなかったのであろうか、ほんとかよと、驚きの声が上がった。俺だって羽目を外して馬鹿やりたい時もある。


「ただ、心に封印をしていただけさ、良い女を見ると、今でも、ときめくのは、他の中高年と一緒だと大声で話した」

「下村支店長は、優しく親切で、本当に良い人だ」

「そんな事、相手が勝手に決めただけさ」

「俺は、本性を隠していただけで息苦しくてしょうがないと語った」

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