第12話 寝坊した

――ピピピ、ピピピ……


 携帯のアラームが鳴り始めたので、俺は携帯の電源ボタンを長押しした。


「ん……もうちょい……」


 俺はそう呟いて、布団を深くかぶりなおす。ついでに部屋の暖房を入れるのも忘れない。


 昨日は結局ミケを撫でていたり、篠田さんと実質デートなことをした興奮で、よく寝られなかった。


 だからこそ、携帯のアラームを三つセットして、ミケにも起こしてくれと頼んだのだ。


「起きるにゃー! ご主人、自分でミケに『起こしてくれ』って頼みながら、アラームを即オフにして二度寝決めるのは、さすがのミケも対応できないにゃー!」


 寒い。

 布団の中はあったかい。

 まだ目を開けるのが辛い。


 この三要素があって、起きられる人間がいるだろうか?


「んんー……」


 それに、起きられなかった時の為に早めにアラームを掛けてあるし、最悪母さんが叩き起こしに来るだろう。


「にゃー! ご主人! ミケをお布団に引きずり込まないでにゃー! こんな誘惑に勝てるわけないにゃ!」


 だから、俺がこのまま惰眠をむさぼってもいいわけだ。


「よしよーし……良い子良い子、ミケはかわいくてあったかくてモフモフだねえ」

「ご、ご主人……そんな褒めても何も出ないにゃあ……」


 布団の中でミケを抱きしめるようにして、再びまどろみへと沈んでいく。


「良い子だから一緒に寝ようねえ」

「にゃ……ご主人が良いならミケは全然オッケーにゃあ……」


 そう、別にいいのだ。


 どうせどれだけ寝ていても、アラームにはスヌーズがあるし。

 起きた時間もいつもより一時間早いし。

 最悪、誰かが起こしに来るし。


 まあ、それでもダメなら朝ごはんでも抜けば何とか間に合うでしょ。


 俺は非常に楽観的な事を考えながら、ミケのぬくもりと一緒に眠りへ落ちていった。


 その時、俺は完全に忘れていた……


 電源を切った携帯はスヌーズが効かないことを。

 父と母は朝早く出かけ、妹は起こしに来ないことを。

 そして、暖房の掛かった部屋は二度寝に最適だという事を。

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