真実と思い

第一話 思い…だした…!

美緒と絶縁してからはや数カ月、僕こと奏は実に良い日々を送っていた…と思いたいが、色々と出来事があった。

まず、秋人君と僕は結論から言うと仲良くなった。ちょっとした事があり連絡先を交換してちょくちょく交流を深めていった感じかな。それからはたまに会って話をしている。美緒とはうまくいっているみたいだ。よかったよかった。

次に、汐音だが、彼女とは既に同居を開始している。同居するまでに色々と起きたが、これらに関しては後日また改めて語るとするよ。

最後に美緒だけど…これと言って語ることはないかな。


さて、ここまでの敬意について軽く語ったところで、今僕の携帯に一本の電話がかかってきている。その相手は…僕の親だ。


「この時期にかけてくるなんて珍しいな…」


「電話、出ないんですか?」


携帯の画面とにらめっこしていると横から汐音が覗いてきた。汐音は珍しいものを見たような顔をする


「奏さんの親からじゃないですか。珍しいですね」


「そうなんだよね。珍しいからちょっと怖い…まぁ、出てあげるかな……もしもし?」


『遅いぞ奏。いつもワンコールで出ろと言ってるだろ』


「無茶言わないでくれ父さん…普段電話で連絡してくることなんか滅多にないからちょっと怖かったんだよ」


電話の相手は僕の父親の胡桃沢大翔(ひろと)だ。今は遠くにいるから会えないけどね。


『んーまぁ、そりゃそうだな。それより奏、最近どうだ?美緒と仲直りしたか?』


「できるわけないよ。タイミングわからないし…僕は美緒に見捨てられたと判断したんだよ?今更何を話せっていうんだよ…」


すでに父さんには、あの日のことを話してある。最初は驚かれたもんだよ。まぁ、驚かないほうがおかしいけどね…少し不機嫌になると、突然こんなことを告げられた


『まぁ、そりゃそうだな。あの日みたいに捨てられたんじゃあんな反応するのも当然か』


「……え?あの日みたい?どういう事?」


『あん?奏まさか、覚えてないのか?本当の親のこと』


本当の親のこと…?僕の親はいま電話してる人じゃないのか…?あ、なんか思い浮かんで……おっ?頭が痛い…


『その様子だとうっすらと思い出してきたみたいだな。忘れてるようだからもう一度言うぞ。俺達は仮の親だ。本当の親は消えたよ、奏を残してな。幸せすぎると忘れちまう癖があるからなお前は…大方美緒との暮らしが良くて忘れてたんだろうな』


何という事だ。忘れていたとはいえ僕は捨てられていたのか…唖然とした顔で携帯を落としそうになった。咄嗟に隣りに居る汐音が支えてくれた。ありがたいね…


「……うん。思い…だしたよ」


『お前は一度捨てられてるからな…俺達はお前の本当の親とは仲が良かったが、突然小さかったお前を渡された時は腰を抜かしそうになったよ。代わりに一発だけぶん殴ってやったがな』


「……」


思い出したことにより僕は数カ月前のやり取りを思い出す。おそらくだけど、美緒に裏切られたと思ったのは、過去に親に見捨てられたときと同じ感覚がしたからなのだろう。また捨てられると思って、本能的に突き放したのだろう。だとしたら…僕は最低だな…


『まぁ、今更思い出したとしても美緒ちゃんと関係を失くしたことに変わりはないな。美緒ちゃんの親にはこの事は話してあるがあの子自身には話してないからな…まぁ、話す機会があったら話してやるといいさ。もしかしたらあの子の親さんが話してるかもしれないがな』


「ん…わかったよ。話してみる」


『そうしてくれ…おっと、そろそろ時間だ。また正月辺りに帰るからな!んじゃ』


それだけ伝えられると電話は切れた…はぁ…


「お疲れ様です奏先輩…色々と事実が発覚しましたね」


「全くだよ…僕が覚えてなかったとはいえ、美緒に悪いことしちゃってたんだね…」


僕は疲れた顔をしたままソファに寝転がった。汐音は少しだけ笑い僕の頭をなでてくれた


「仕方ないと思います。忘れていたとはいえ本能的に拒絶してたと思いますから…なので、悪いのはお互い様だと思います」


「……そうだといいね…お、メールだ。秋人君からか…」


内容は…ほ?


「……美緒が…浮気?」


「えっ…?」


そんなことはないと思うけど、メールに添付された写真には、僕の知らない男性と美緒が仲睦まじく手を繋いで歩いている姿が写っていた。これは…過去について話をする暇もなさそうだな。


「汐音、明日秋人君と話しに行くけど、ついてくる?」


「行きます。行かせてください」


汐音は真剣な眼差しで僕を見つめた。それを見て僕も覚悟を決めた。秋人君にはメールでできれば美緒を連れて明日の昼頃駅前のカフェに来てほしいと送っておいた


「明日はカフェが戦場になるかもね…できればそのときに過去の事を言えればいいけど…」


「厳しいかもですね…間違いだといいんですが…」


僕もこの写真については間違いだと思いたいところだね…何はともあれ、明日恐らく明るみになるはずだろう…





ーーーーーーーー

【あとがき】

どうも。蟹肉ソーセージです。更新遅れて申し訳ないです…まさか12時間仕事場にいる日が連続で起きるとは思ってなくて、作品に力を入れる時間がありませんでした…

そんなことはさておき、なんとこの作品の累計PVが2万を超えておりました。非常にありがたい限りです。たくさんの方に見られるとは正直プレッシャーではありますがめげずに頑張り続けますのでこれからも応援よろしくお願いします。


さて、奏君の過去が明るみになりました。美緒に厳しく言い過ぎてしまったのはこれが理由なんだなと思って貰えればと。ちなみにあのあと智恵さんは美緒が奏の過去について知らないことを知り全力で謝っています。そのうち奏に謝らせる気でもありますのでご期待を…

ちなみに今話の時期は秋の中間です。美緒と絶縁したのは夏休みが開けてちょっとしたくらいの時期です。

秋人君と汐音ちゃんとの出来事に関しては、話がちょうど区切れる辺りで書いていこうかと思っております。話数的には少なくなる感じですかね。


こんな感じですか。最後にひとつだけお知らせを…この作品に関してですが、秋人達の出来事と今回の事件?を書き終えたら、この作品の更新を一時的に辞め、新作を投稿しようと思っておりますのでちょっとだけ期待してもらえると嬉しいです。

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