ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

うんこ

第1話 リストラされた僕、それでもギルドにしがみつく僕

「お前、働いてないから、追放」


 ギルドマスターであるタイチの声がギルドホールの会議室に響いた。

 その言葉に僕は耳を疑った。


「な、なぜですか?」

「だって、お前、治癒魔法使いのくせに、全然、俺達のこと治癒してないじゃん」


 タイチはレベル90の戦士。

 パーティでの戦闘では常に壁役として働いていた。

 僕は彼やパーティのメンバーを後方で援護していた。

 それが伝わっていなかったとは……


「ユウタ」

「はい」

「我がギルド『鉄騎同盟』はメンバー数10名の零細ギルド。それだけのメンバーをクエストの少ない報酬で賄っていくのは大変なことなの」


 会計係のセイラが冷たい声で言う。

 彼女はレベル80の魔法使い。

 確か属性は『風』。

 銀縁メガネを指でクイクイ上げながら、帳簿を見ている。


「分かってくれるわね」

「う~ん」


 僕は腕を組んでしまった。

 要するにこのギルドは、貧乏だということか。

 僕は口減らしのためにクビになるという訳か。


「これは俺からの餞別だ」


 そう言いながら3枚の金貨を放って来たのは、ギルド一のお調子者、ナオシゲ。

 彼はレベル50の武闘家。

 一番僕に優しかった。


「……」


 じっと僕を見つめたまま黙っているのは、暗殺者のリンネ。

 確か14歳。

 このギルドで一番若い。

 黒髪の美少女で、無駄口を叩かず確実に仕事を遂行する。

 その他にもメンバーはいるが……

 この場には僕を含めてこの5人のみ。


「分かりました」


 僕はギルドに恩を感じていた。

 孤児で奴隷商人に売られていた僕を、ギルドマスターのタイチは拾ってくれた。

 屋根のある部屋で生活出来たことは、僕に人間らしい気持ちを取り戻させてくれた。


 そして、僕は自分が治癒魔法を使えるということに気付いた。


 だけど、僕の治癒魔法はとてつもなく特殊で、皆には気づいてもらえなかったみたいだ。



 ギルドホールを出た僕は、しばらくどうしたものかと立ち尽くしていた。

 この世界は魔王討伐に躍起だった。

 いくつものギルドが形成され、その中からいくつものパーティが生まれていた。

 誰もが一旗揚げようと、必死だった。

 僕はいくつかのギルドを訪問しようかと思った。

 人生には目的があった方がいい。

 それに、強くなればまた、『鉄騎同盟』からの誘いも来るかもしれない。

 その時は、本当に恩返しが出来るかもしれない。


「おっと、失礼」


 僕の横を、長身白髪の女性が通り過ぎる。

 いい香りがした。

 切れ長の目にはサファイヤブルーの瞳が輝いている。

 ローブをはためかせながら僕が先ほど出て来たばかりのギルドホールに向かっている。


「あ」


 彼女を出迎えたのは、タイチ。

 彼は深々と礼をし、こう言った。


「やっとタダ飯喰らいをリストラ出来ました。リサ様。今日から治癒魔法使いとして、我がギルドで活躍をお願いいたします」


つづく

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