第41話 魔王の店主と酔っ払い ラスト

「おお、これは美味い!」


「これだよこれ! 揚げ物を待ってたんだよ!」


「いや、これ揚げ物か? 炭水化物料理じゃねーのか?」


「どっちでも良いだろう! とにかくこれは間違いなく酒に合う料理だ!」


 予想通り、連中には好評のようじゃ。

 なんというか……この料理はジャンクというか下品と言うか……。

 店主がたまに食べさせてくれるカップ麺とか、分類するのであれば明らかにそっち系なのじゃ。

 と、なれば、酒のお供の料理としてこれほど相性の良いものもなかろう。 

 特に、高級ワインをチビチビ飲むような上品な席ではなく、ビールやらハイボールをグビグビと一気飲みするような席では……な。


「美味い!」


「やるじゃねえか嬢ちゃん!」


 くふふ、と我は胸を張って笑ったのじゃった。





 

 失われた古都へとつながった翌日、店は定休日だった。

 で、とにかく俺は一日寝込んでいた。

 その翌日の朝、どうにもタミフルが効いたようで、嘘みたいにインフルエンザの諸症状は消えていた。

 そうして俺はいつもの日常を取り戻した。



 それから――。

 しばらく経って、失われた古都につながった時、コーネリアの一日店主の話を聞いたときは本当に驚いた。

 素人が厨房に立ったのにも驚いたし、それでお客さんもボチボチ満足しちまったんだから更に驚きってなもんだ。

 まあ、飲んだくれの連中だから何とかごまかせたところもあるんだろうが……。

 と、それはさておきコーネリアだ。

 今日は失われた古都につながる日で、お客さんの要望もあって……今日の店はある程度コーネリアに任せてみようと思っている。

 つってもまあイベントとかそういうノリで、メイド接客やらお好み焼きサンドイッチやらのコーネリア考案の新メニューやらの披露やらを特別に許すとかそういうノリだ。

 コーネリアはコーネリアで色々と考えているみたいだったし、たまにはそういうのもアリかな……と思った訳だな。

 で、今現在……コーネリアが店の従業員用更衣室から出てこないという状況となっている。

 かれこれ1時間ほど経過しているが、はてさてどうしたんだろう……と思っているときにコーネリアの声が聞こえた。

「うーむ……この本に書いてある通りにやっているのじゃが、中々にバチっと決まらぬの」

 あまりにも長すぎる。

 気になった俺はコンコンと更衣室をノックした。

「入って良いか? コーネリア?」

「うむ。構わぬぞ」

 入った瞬間に俺は絶句した。

「何じゃ……そりゃ?」

 ぷりぷりのお尻を隠すボトムは極限までに面積の少ない白のTバック。

 そして平らな胸の……大事な部分を隠す白の三角ビキニトップは、これまた極限までに面積の少ないものだ。

 ちょっとした拍子で速攻で乳首がコンニチワしちゃうのが一瞬で想像できるほどに、非常に際どい。

「くふふ……」

 ドヤ顔のコーネリアに、かなり引き気味になりながら俺は尋ねた。

「どうしたんだよコーネリア? その恰好は?」

 薄い胸を張りながらコーネリアが高笑いと共に言った。

「これぞ新境地! マイクロビキニ風接客じゃっ! 我のリサーチした本で特集されておったわっ!」

「本? 何を参考にしたんだよ?」


「ヌキヌキ天国という雑誌じゃが?」


 風俗雑誌じゃねーか!

 確かに家に置いてたよな……くっそ……処分するの忘れてた!

「とにかく、ウチはそういう店じゃねえから!」

 と、マジ切れしながらコーネリアの頭にゲンコツを落としたのだった

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