第11話 コロニーの開放
ガロンはアーリーンとの約束を果たすために、チッゴリバーのコロニー周辺のいろいろな種族を回りました。まもなく大ナマズ族は大部分が地下世界に移住して、広大なコロニーの支配地域をすべて開放すること、その際、そこを争いのない地域にするためにすべての種族が協力することなどを説明しお願いして回りました。
最初、ガロンが生きていることに驚き、激しく敵意を見せて近付くことさえ許さなかった各種族ですが、大ナマズ族が少しずつ撤退して、肥沃な地域が目の前で開放されていくにしたがってガロンの話を受け入れるようになりました。
しかしガロンの話に最後まで耳を貸さない種族もいました。それはサメ族でした。彼らは単純で凶暴な肉食魚です。言葉もあまり理解せず、血の匂いを嗅ぎつけて集まり、本能に支配されて獲物を襲います。
彼らはコロニーの平和などどうでもいいのでした。
ガロンはサメ族と最後の戦いをするか悩んだ末、また川の主のどん兵衛爺さんに相談に行きました。以前のガロンであればすぐに軍隊を率いて獰猛なサメ族と躊躇なく戦いを挑んだでしょう。
いろいろな人の支援や協力を受けて、ガロンは変わったということです。
「おー!ガロンちゃん、お久しー!サメ族の事かい?」
「え!どん兵衛様も心が読めるのですか!?」
「ほっほっほー、そうだよって言いたいところだが、実はガゴーンちゃんから少し前にテレパシーがあったんだよ。
ガロンちゃんが今回の件ですぐに戦いを起こすようだったら少し頭が単純すぎて大きな使命を果たすことは難しいかもしれんって言っていたよ。
ガゴーンは君を期待していつも見ているってことさ。」
「そ、そうなんですか。…(ショックだ)」
すでに並行的に戦争準備を始めていたガロンは、戦争を起こさずによかったと心の中で思いました。そしてこんな考えをしたことすらガゴーンは心を読んでいるんだろうなって思いました。
… 心を読まれても平気なくらい誠実に公明正大に生きていこう。
「ガロンちゃんわかるかい?大ナマズがサメ族に攻め入ると、せっかく説得した他の種族も戦いに参加するだろうね。
この際、大ナマズを倒した方が自分たちの自由になると考える種族はサメ族に味方するだろう。チッゴリバーで大きな戦いが始まるんだよ。それも簡単に終わらない血で血を争う戦いが続くだろうね。
今は、それほど危険な状況なのさ。結局、曽祖父のガリバルドン爺さんが力で制圧して手に入れたコロニーだからね。いつでも力の世界に戻ろうとするんだよ。」
「平和を望んで始めた行動なのに …」
ガロンの起こした戦争がすべてを巻き込む大戦争になるとは予想もしませんでした。
それに新しい王国を手にした大ナマズ族にとって、戦争を起こす必要性があまりないのです。
コロニーを平和な地域にしたいというのは、最初アーリーンの望みでした。しかし今はガロンの確固たる目標になっています。
でも国民の多くが戦争をしてまでコロニーに理想平和をもたらすことを望んでないでしょう。
今回も軍事参謀や行政参謀は戦争準備に大反対でした。
ガロンはあいかわらず部下たちの意見をあまり聞かないのです。
「あいかわらずだなあ …」部下たちも、ガロンも心の中で思いました。
また一人で自分だけの目標を掲げて悩むガロンでした。
味方はいつでもアーリーンだけ? …でも今度の戦争は反対だろうな …
「それは王の孤独の悩みだよ。」
どん兵衛の声でガロンはハッと我に返りました。
「は、はい…」
「ところで、ここに来た理由は僕に相談するためだけじゃないだろ?」
「いえ??、どん兵衛様に良い指針をいただきたくて来ました。」
「違うよ。僕がガゴーンの意思を代弁しているから、それを聞きたくてガロンちゃんは僕のところに来たんだよ。」
「 …そうかもしれません。」
「ほっほっほ、ガロンちゃんは太古の昔には海にいたサメ族が今はなんでチッゴリバーに住んでいるか知っているかい?」
「え!サメ族は川の魚ではないんですか?」
「ガゴーンちゃんはアケボノ海のシャチの王に連絡をするって言っていたよ。」
「シャ…チ???ですか。」
「ほっほっほ、今回はというか、今回こそガゴーンの力が必要なのさ。」
…
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