第4話寝不足の莉久

翌日。

姉さんが俺の頬にキスをした。やわらかい感触だ。俺は、もうこの感触になれた。小さい頃からやられているから。

この間になんやかんやあったが、きりがないので割愛。

玄関の前。

「気を付けてね、リクちゃん。今日は早めに帰ってきてね、待ってるから」

いつもの甘ったるい声だ。

「嫌だけど、なるべくね。咲姉、行ってきまーす」

玄関扉がしまる前に泣きそうな声で叫ぶ姉さん。

「リクちゃん、嘘だよね......嘘ってい─」

途中で聞こえなくなる。

歩いている途中、同学年だと思われる女子に挨拶された。俺は普通におはようと返すと、黄色い悲鳴をあげられた。

「キャー、貴方はもしかして。牧平君?」

「キャー、もしかして...牧平さん?」

「そう、ですけ......ど」

戸惑いながらこたえる俺。

「「やっぱり」」

彼女たちのいきがぴったり重なった。

「私、一年二組の佐藤弥生。よろしくね、連絡先あとで教えてね。学校でね」

「私もあとで、連絡先教えてくれますか?牧平さん。火野望菜美(もなみ)です。仲よくしてください。学校でっ」

そう言って、学校まで走って行く二人の女子。

15分後。

学校の下駄箱で、スリッパに履き替えてるときも、女子から挨拶をして一言言って離れていく。

廊下でも、教室でも女子から話しかけられることが多い。理由は、俺の顔が女子みたいに可愛いから。

教室に入ると、教室にいた女子が次々挨拶をしてくる。それに返す俺。

席に座り、一日の用意を机の中にいれる。

「莉久君はさー、昨日のあれ観た?」

「あれは観れなかったよ、姉さんが─」

金髪のツインテールの子が話しかけてきた。

彼女に話をあわせる。

話は、三分ぐらいで終わる。

「またあとで。莉久君」

「うん、榊さん」

ポケットに入っているスマホから音楽が鳴る。

「もしもし。どうしたの」

『リクちゃんの声が聞きたくて。ヒマでしょ、リクちゃん』

「講義頑張ってね、早く帰るから。心配しないで、じゃ」

返事が帰ってくる前に通話を切った。

スマホをポケットにしまおうとしたとき、前からご機嫌斜めの低い声が声をかけてきた。

「牧平さん、ちょっといいかな」

「今は無理なんだ。今日は寝不足で、昼休みか放課後になら。いいかな、名倉さん」

「牧平君と一緒にご飯たべたーい」

ある女子が声をあげる。

俺に向ける名倉さんの鋭い目がより鋭くなる。

「わかった。じゃあ、放課後に」

そう言って、席に戻る名倉さん。

俺の席の近くに数人の女子が駆け寄って、話しかけてくる。


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