第2話 新しい飼い主

数時間後


「ここはどこなんだろう?」

 

 周りは草だらけで、たまに木が数本生えている、ただっ広い草原というのはわかるけど、土地感もないしさっぱりだ。


 異世界に来た実感だけが湧いてくる。


 とか考えていると、前方から何やら声が聞こえてくる。


「ふんふんー♪」


 どうやら鼻歌を歌っているようだ。


 遠目で後ろ姿を見る感じ、二足歩行で移動している。

 助かった人だ。


 俺はダッシュで鼻歌が聞こえる場所に移動した。


「ん? なんだ?」


 相手も俺に気づく…。

 アレ? 顔がネコいや…あれは虎? ってうわわっ!


 これはヒロシのやっているゲームで見たことがある。

 姿って奴だ。確か人の言葉を理解でき知性が高く、戦闘力が高い生き物ってなんか言ってたな。


「おお…可愛いなこいつ…オオカミっぽいが? はて」


 俺はトラ顔の人に抱きかかえられた。

 クンクン、匂いを嗅いだ感じ、見た目は怖いが敵意や殺意は感じられない。


 いい人? ぽい。よし確認しよう。


ペロペロ


「うわっ! 顔をなめるなっ。くすぐったっこいつっ」


 トラ顔の人は驚いていたが、笑顔で頭をでてくれた。

 よし、いい人だ。


「お前腹減ってるっぽいな…よしよし干し肉をやろう」


 ワンワン。尻尾を千切れんくらいに振る俺。

 美味いっ何の肉か分からないけど。

 

 俺は尻尾をふり、トラ顔の人の周りを嬉しそうに回った。


「ありがとう、美味しかったですっ」


 驚いた顔をし、こちらを見るトラ顔の人。


 しまったっつい喋ってしまった。


「おまっ? 喋れるのか?」

「えっ? いや気のせいだワン?」

「えっいや、思いっきり喋っているよな? 今も?」


 俺は咄嗟とっさに話題をそらした。


「…えっと実はですね、飼い主とはぐれてしまって…」

「えっ? 何処から?」

「遠いとこです…漂流してしまったみたいで…」


 遠い目をし、夕日の沈みかけた太陽を見つめる俺。


「そ、そうか、お前名前は?」

「コタロウです。貴方は?」

「…俺は雷獣コンヤニだ」


 しばらく目と目があったまま沈黙が流れた。


「お前嘘は言ってないみたいだな。俺の名前を聞いても反応がなかったし」

「?」


 俺は首を傾げた。


「まあいい、お前俺についてくるか?」

「ワンッ!」


 俺は力強く吠えた。


「はっはっは、そうかそうか。返事は鳴き声なんだな」


 コンヤニは笑いながら俺を抱きかかえた。


 どうやら俺は新しい飼い主候補を見つけることに成功したようだ。


「コンヤニ様っー」


 遠くから声が複数聞こえてくる。


「今いくまってろー」


 大声で返事をし、複数の声が聞こえる方向に移動するコンヤニ。


「悪いまたせたな、ちょっと拾い物をしてな」


 俺に視線を向けるコンヤニ。


「おお、食糧ですか?」

「馬鹿ッ飼うんだよっ」


 大声で怒鳴るコンヤニ。


「ひいっ、すいませんっ」

「次その冗談をこいつの前で言ったら、お前の頭は胴から離れるということを覚えておけっ!」

「は、はいいっ!」


「お前馬鹿だなー新入り…コンヤニ様は小動物を何体か飼っているペット好きなんだぜ?」

「り、理解しましたっ」


 …とりあえず、命拾いしたようだ。危ない危ない。

 優しいコンヤニに見つけられてほんとに良かった。

 こいつらに先に見つけれたら、そう思うとゾッとした…。


 色々あったが、俺はコンヤニに連れられ、コンヤニの住処に行くことになった。

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