第3話

「先輩、初恋はいつですか?」

「小学生」

「おぉ!早いですね!」

「早いのか?」

「ネット調べでは男は中学生くらいからって事になってます」

「へぇ」


 あんまり興味がないから声が適当に漏れた。

 すると、彼女はちょっと意地悪そうな笑みを浮かべる。


「ちなみにお相手は?」

「保健担当の先生」

「うわぁお!定番!エロかったんですか?」

「大人の魅力にドキドキしたのはアレが初めてだったな」

「カァー!いいですねいいですね!告白はしたんですか?」

「いや、流石にその勇気は出なかった」


 また馬鹿にされるかと思いきや、柳沢は腕を組んでうんうんと頷く。


「甘酸っぱい思い出ですね~。まぁ、アタシも初恋は小学校の体育教師でしたよ。二の腕の筋肉に惚れました」

「意外だな。顔とかじゃないのか」

「机の幅が狭ければ迷わずグーを突き出しているところですよ。失礼な!アタシは顔面には興味ありません!昔から今この瞬間まで!筋肉が大好きです!」


 彼氏はさぞマッチョな男なんだろう。


「彼氏はいい筋肉ついているのか?」

「今絶賛、改造中で」

「改造?」

「お菓子とかを制限させて、運動をさせてるんですけどこの間の文化祭で必要以上のカロリーを摂取してて」

「縛り付けすぎなんじゃないか?」

「でも今が良いところなんです!ようやくお腹の脂肪が取れてきていい具合なんです!もっと鍛えれば割れて、カッコよくなります!腕や足の方はいい感じなんですよ!背筋が甘い気がするので今後はそこを強化……私の話はどうでも良いんです」


 すっごく熱く語っておいてそれは無いと思う。


「今は先輩の初恋メモリーを聞いてアタシが大爆笑するところなんですから」

「酷い後輩だな」

「え?保健室の先生の後は?」

「中学の時の英語教師かな」

「外国人?」

「いや、日本人。え?外国人の教師とかいたのか?」


 うちの学校にはいなかったぞそんな凄いの。


「いや、スピーキングの授業?とかでいましたよ。変な匂いのオバサン」

「外国人要素が全く見られないな」

「いや、外国の人って変な匂いの香水付けてるじゃないですか。匂いキッツいの」

「そんなに嫌な匂いか?」


 時々、外国人とすれ違うがあんまり気にしたことが無いからわからなかった。


「アタシの好みじゃないんです。話し戻しますけど、その英語教師はどこが良かったんですか?」

「え?あぁ、見た目かな」

「やっぱ見た目か」

「あとは新任教師でワタワタしているのが可愛かった」

「ギャップ萌えか」


 それは合ってるのか?


「先輩も男の子だったんですね~」

「どの立場からの言葉だそれは」

「現役彼氏持ちの経験豊富な先輩ですよ?アタシは」


 その言葉を出されると俺は頭を下げるしかない。

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