第七話 「強サト弱サ④」

 家に帰ったツナギとシュウカ。夕飯の準備も済まし、テーブルにつく。

「今日もお疲れさまなの~」

「お疲れさま」

二人でいただきますをし、食べ始める。

ふと何気なくつけているテレビが目に付いたツナギ。

【──「"あの"角ノ森グループの一人娘、兼後継ぎで、なんと七ヶ国語も話せちゃうという噂のお嬢様に、我が番組は独占取材することができました!こちらはその映像です。それではどうぞ!」──】

テレビの画面が映像に切り替わると、そこにはツナギが以前に駅でぶつかってしまった白杖の女の子が映っていた。テロップには『かくもり 白世しらせ』と出ている。

「えっ」

「ん?どうしたのツーちゃん……あ、この子~」

「知ってるの?シュウちゃん」

「知ってるもなにも、SNSでも有名人だよ~。なんでも、この子が関わった企業が軒並み右肩上がりだっていう……」

「この子が……企業……?」

どうみても小学生くらいにしか見えなく、テレビでも歳は公開されていないが、周りの大人の反応がそれ相応の態度で接してる辺り間違ってはいないのだろう。

「もともと角ノ森グループっていう大企業の一人娘で~、テレビでも言ってたけど頭がすごくよくって、既に何個か会社を持ってるだとかなんとか~」

「すごいね……」

「シウ達と住む世界が違うって感じだよね~」

シュウカは住む世界が違うと割り切っているのか、あまり興味もなさそうにしていた。

「そんな子が……」

ツナギは自分が故意ではないとはいえ、ぶつかってしまった畏れ多さと、今考えるとスーツを着ていた人のあの異様な空気感に納得し、少しばかり悪寒がした。

「ツーちゃんどうしたの~?」

シュウカが首をかしげて不思議そうにツナギを見る。

「あはは……なんでもないよ」

ツナギは苦笑うことしかできなかった。


【──「それで白世お嬢様は一部では全てを見通すことができるだとか噂が囁かれていますが、それは本当ですか?!」

「……目はもともと弱視で完全に見えないわけではないですが、日常生活では使用人に頼っています。ありがたいことですね。感謝しています。」

「し、質問の意図と反してますが、これもまた彼女の計算なのでしょうか!?私達は小さな少女の掌で転がされているんでしょうか!」──】

 少しくだらないともとれるオーバーリアクションのインタビュアーに対し、年齢に似つかない言葉を返すシラセ。

(……この声、どこかで……)

ツナギは既視感のようなものを感じていた。けれどそれは一度彼女と接触した時なのか、また違う所でなのかはわからなかった。

(まぁ、これだけ有名人なんだし、気にしていなかっただけで私も目にしたり聞いたりはしていたのかも)

(そういえば、あの時……なにか言われたような……?)

ツナギがあれこれ考え込んでいる間、シュウカもテレビをみながら黙々とご飯を食べている。

テレビの中の彼女は綺麗に着飾られており、耳元には緑色の石が煌めくイヤリングをしていた。

(………………。)



「ごちそうさまでした」

テレビの特集が終わり、ご飯も食べ終わったところで二人で片付けをし、課題や明日の準備のため互いに自分の部屋へと戻っていった。

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