05

 帰って来た彼は、完全に仕事モードだった。

 身体を強引に引き寄せられて。ただいまのキス。舌が、わたしの口のなかをぐちゃぐちゃかき乱す。耐えきれなくて、少しだけ胸を彼に擦りつけた。

 彼が、わたしを離す。彼と接着していた身体の部分が、ちょっとびくびくした。かろうじて、身体を支える。


「仕事の時間だ、チェイン」


「セックスは」


「仕事終わりまでお預け。したかったら仕事をこなすんだな」


 彼。完全に、フェロモン全開の攻撃モード。抱かれたい気分を押さえつけて、仕事について訊く。


 狐狩り。


 夜の街のどこかにいる、狐の皮を被った何かを、壊す仕事。


「人か?」


「人だったらすぐに見つかってる。でも、見つかってない。俺は、機械の中に入り込んだんじゃないかと思ってる」


「じゃあ、見つけるまではアクセラの仕事だな」


 ちょっと、心がざわっとした。そういうところに、彼を、アクセラを入り込ませたくない。


「俺の心配をしてる場合か?」


 彼の手が伸びてきて。


「う」


 股間に、親指が刺さった。すぐに引き抜かれる。親指だったから、奥まで刺さらなかった。入り口だけが、じっとりと濡れてくる。


「セックスを人質にはしたくないが、仕事はしてもらないとな」


「アクセラ。せめて中指とかにしてくれ」


「だめだね。ほら。着替えろよ。下を濡らしたまま外に出る気か?」


「くそ」


 着替えようと思って奥に引っ込んだけど、彼がついてきて、着替えをじっと見られた。


「おい」


「アクセラがひとりでしないように、監視だよ」


「はあ」


 ひとりでもできないのか。


「仕事する気になったかな?」


「するよ。する。もう。セックスを人質にとるのは卑怯だぞ」


「アクセラがすぐ仕事をする気になってくれれば、こうはならなかった」


 下が濡れて仕方ないので、ナプキンを雑に下着に貼った。これでとりあえず耐えよう。


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