第13話 浮世柄比翼稲妻(うきよがらひよくのいなずま)

「あ、レオンくん!」

ボストン港にいるメシヤ少年たちのもとに、レオンがたどり着いた。


「マナさんもご一緒ですよ」

メシヤの妹・マナも遅れて付いてきた。


「また奇妙な組み合わせね~」

 マリアがからかう。


「マリアさん、わたしも最初は緊張したんですけど、レオンさん、色んなことを知っていて、退屈しないんです!」

 マナが援護する。


「さっすがレオンくんだね!」

 メシヤにとって、レオンは妹を安心して任せられる存在のようだ。


「それで、私達はこれからどうすればよろしいのでしょうか?」

レマがやや棘のある言い方をレオンに向けた。


「はい、メシヤくんの臥龍剣と鳳雛剣をここで使います。ハイパーループ建設の大きな障害が、この大西洋のなみなみたる海水量です」


「レオンくん、まさか・・・」

「そのまさかです。まず臥龍剣で大西洋の水を割ります」

あのメシヤでも心配するくらいのことをレオンが口にする。


「さながら、モーセの十戒じっかいですわね」

レマが自分たちの指導者の名前を持ち出した。


「でもさ、レオンくん。臥龍剣で大西洋の水を割ることは出来ると思うけど、ループを通すあいだずっとその状態をキープするなんて無理なんじゃないかな?」

メシヤが珍しく気弱だ。


「ええ、そこで、マリアさんにもご協力してもらいます」


「え? あたし?」

マリアは急に自分の名前を出されて驚いた。


「アトランティス大陸浮上とまでは行きませんが、ボストン-リスボン間の水を干上がらせ、その軌道両側に大地を隆起させます」


メシヤはそこまで聞くといつもの企んでいる表情を浮かべた。

「しかして、その方法は?」


「先だっての太陽エネルギーのチャージで、鳳雛剣には充分の火力が充填されています。まず、メシヤくんが海水を干上がらせたあと、マリアさんが鳳雛剣を発動させて、お二人で光瑤剣こうようけんを現出させます」


「あの光エネルギーなら確かにそれくらいのことは出来そうネ」

エリは光瑤剣の天文学的なエネルギーを目の当たりにしている。


「だが、聖剣はメシヤじゃないと威力を発揮しないんじゃなかったのか?」

聖剣獲得の時から居合わせているイエスが、尋ねる。


「いえ、問題ありませんよ。メシヤくんとマリアさんなら比翼の稲妻を起こせますから」



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