花と髪


訪れた郊外の公立中学校の正面玄関で、受付の男に用を伝え目的の相手を待った。ガラスケースに生け花が飾られてあった。添えられたキャプションに華道部の学生によるものとある。技も拙く、器も素材も素朴な、凡庸さがむしろ目を惹いた。近づいて観察すると、花の頭から細い糸のようなものが一つ垂れている。淡く黒い。おそらく髪だろう。花を生けた少女のものだろうか。草花に馴染んで、それもまた植物のようである。

半月ほどのち、再び学校を訪れた。まだ花はあった。彩りは褪せた。髪もあった。光をうけると白く透ける。


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