第14話 ダークネス②

 サラは夕方から、ずっと深い眠りについていた。夢の中で、自身と瓜二つの12人の少女達が出てきた。広い居間の中で、少女達は何も語らずー、ただじっとこちらを見つめていた。12人がじっと何か物言いたげにじっと訴えているようでもあった。それは怒りだろうかー、それとも助けだろうか定かではないが、何か後味の悪いものだった。

 サラは、頭が酷くクラクラした。脱力感と倦怠感の様な物を感じたー。衣服は汗でびしょびしょだった。

 すると、ドアの向こう側から足音がして、オクタビアが姿を現した。

「体調は、どう?」

オクタビアは水と果物をサラの脇ににある棚に置くと、側に座った。

「私ー何処でをー」

「ーええと、戦い終わりに倒れて、ルミナとエリアムが連れてったみたい。あと、体調が回復したらメリーが、色々検査したみたいなんだけど・・・」

オクタビアは髪をクルクル回しながら、困ったように話す。

「ー検査ー?」

「うん。何か、脳か全身をスキャンしたり、記録していたみたい。」

サラには、オクタビアは明らかに何かを隠しているのが直感で分かった。

今まで感じていた違和感ー、周囲の複雑な反応ー。

「サラー、」

オクタビアはカーテンを開け、背を向けながら話した。

「ん-?」

「私は、昔、人間だった頃、親友がダークネスだったことがあるの。狩りの対象になって殺されてしまってたけどね。その人ー、私の事を妹の様に思ってくれてたみたいー。私が他のダークネスに襲われそうな時も助けてくれたの。なんだか安心したな。だから、その時の彼女のは、本物だと、思ってるよ。」

オクタビアは、窓を開けて遠い目をしながら、話した。

「ダークネスー?」

サラは忙しなく起きて、オクタビアの方を向いた。

「うん。だから、私がそうだったからさ、サラが自分に違和感を感じても私は受け入れるよ。私達、ダークネスを狩る立場なのに、何だかおかしな話だよね。」

オクタビアはコップに水を注ぐと、サラに手渡した。

 サラは、自分の親を知らない。名前も顔も分からない。周りの同胞達は、昔の人間の少女だった頃の家族との思い出があり、時折、耳にするが、他人には語れるものなどないのである。家族との思い出などないから、家族の概念を理解することができない。同胞達との思い出話は自分にはおとぎ話の様な不思議な感覚がするのである。


自身は、誰かのクローンだったらしいー。自分のオリジナルは誰なのかは定かではないが、組織からダークネスか何かとてつもなく強い存在の人であったとは、聞いている。組織に詳しい情報を問い詰めた事はあるが、組織は頑なにそれを拒んだのだった。一度だけオリジナルの昔の写真だけは見せてもらった事があるが、自分と瓜二つの容貌をしており、親近感が湧いたりしたものだ。


そんな自分には瓜二つの容姿の12人の姉妹がいた。皆、見た目はごく普通の儚い感じの美少女であった。

しかし、自分以外、皆、戦闘能力が桁違いに強かった。巨大な岩の塊を容易く持ち上げそして投げてしまう、猛獣を凌駕する怪力や、秒速で移動する俊足さ、僅かな念力で市街地を丸ごと破壊してしまう禍々しい不思議な力ー。

 何故か自分意外の達は、喜怒哀楽が欠如していた。誕生日を祝ってもらう時も、理不尽な目にあっても、誰かが亡くなった時も彼女達は、冷ややかな表情を浮かべながら、一切誰とも交流を持たず、各々違う事をしていたのだった。まるで陶器の人形の様であった。

しかし、それは110年前の事件で達は、皆、ダークネスにより命を落としたのだったー。

唯一、生還したのが自分だけで、残り10人は皆命を落とし、2人は消息不明となった。

何故、の中で、自分だけが無事に生還したのかは定かではないー。

自分はの中で1番の非力な方で、いつダークネスに殺されてもおかしくない存在であった。

自分の中には時折、マグマの様な熱く燃えたぎるエネルギーを感じることがあるが、それは気のせいではないらしい。





 オズワルド・ホークショー は、一見、何処にでもいる、ごく普通の青年である。しかし、彼は何処か周囲とは明らかに違っていた。何処が違うとは分かりづらいが、何人かはは自分の事を化物でも見るかの様な目で嫌悪の眼差しをこちらに向けてくるのだ。

 性格はごく普通の明るい青年である。友達も6人位はいる。しかし、時折、自身は、友達達と何かが違う様な分厚い隔たりの様な物を感じた。

 オズは、今日もいつものルートの道を歩き、パンとミルクを買いに店に向かった。

  突き当りの細い路地に差し掛かかった時、ライタースーツの様な物を纏った少女と、シャーリーが背後が眼前に現れた。

「よお。兄ちゃんー。」

ライダースーツの少女は、意地悪そうにオズにヒラヒラ手を振った。

「ー」

オズはイマイチ状況が飲み込めないでいた。中世貴族を彷彿とさせるゴスロリファッションの美少女に、ピチピチのライダースーツの格好をした金髪でグラマラスな体型の美少女が自身に話しかけてくる。今迄の人生、殆どの女達からまともに相手にされる事はなかった。気味悪がれ、話す機会もあまり無かった。

 すると、魚の焦げたような臭いがし、たちまち人々は黒い渦に飲み込まれ、飲み込まれなかったものは髑髏と化した。



すると、ライダースーツの女の姿はたちまち姿を消した。そして、オズの身体は宙に浮き、煉瓦の壁に叩きつけられた。

「ー!?」

オズは全身に強い痛みを感じると、周囲をキョロキョロ見渡した。

 そこには、無数の髑髏と化した人の残骸があたり一面に散らばっているのだった。

「何なんだ。お前はー」

オズは驚愕し、その場を逃げようとしたが身体が重苦しく動けないー。すると、何か強い力に頭が押さえつけられた。彼は地面にへばりつく体勢で、近くにある小石をシャーリー目掛けて投げつけた。すると、小石は透明な硬い壁の様な物で跳ね返り、シャーリーは意地悪そうに彼を見つめているのだった。

「何だ、こうして見てると、只の人間じゃないか?」

ふと、ライダースーツの少女は姿を現すと、力を緩めて眉をしかめていた。

「あら、油断禁物ですわよ。彼は、なかなか強者ですわ。」

シャーリーは、冷淡に微笑みながら話す。

 ライダースーツの女は、オズの頭を再び地面に強く押し付けた。

 すると、オズの体内からドクンドクンと、ロウの様な熱いものが湧き上がった。それは、前々から感じていた既視感のような物でもあった。

 そして、オズは悲鳴をあげた。ドクドクと黒い禍々しい物が自分の体内から放出されるのを感じた。すると、群青色の炎が彼を包み込んだ。群青色の炎は次第に強くなり、そして爆発したようにメラメラと強く広がった。すると、その中から豹の様なシルエットが見えた。そしてその炎は弱くなると、黑豹が姿を現したのだった。姿形は黑豹だが、身体のサイズはその一回り程、大きい。

 黑豹は二人を睨みつけると、すく近くにいた、ライダースーツの女に襲いかかった。ライダースーツの女は姿を消すと、黑豹のみぞおちに蹴りを入れた。黑豹は、即座にライダースーツの女の足を噛み付くと、振り子の様にブルブル激しく振り回した。ライダースーツの女は、もう片方のアシで黑豹の顔面をキックすると、シャーリーの方まで大きくバク宙して、着地した。

「フー。危なかったぜ。」

「まだまだこれからですわ。」

シャーリーは意地悪く笑みを浮かべているのだった。





 

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