第47話:ファーウェイ問題とグーグル、量子CPの超越性の実証

 米国家安全保障局「NSA」の元職員エドワード・スノーデン氏がリークした同局の書類によると米国はファーウェイのシステムにハッキングを仕掛けていた、と報じられている。ロイターはこの様な攻撃について独自に事実確認ができなかったとはいえファーウェイ封じは、重要な事である。


 米国と、その同盟国、特に機密情報を共有する「ファイブアイズ」に属する英国、カナダ、オーストラリアとニュージーランドにとって大きな課題となる。中国深センで1980年代にひっそりと誕生したファーウェイは、世界通信網に深く根を張った巨大テクノロジー企業へと成長し5Gインフラ構築で主導権を握ろうと目論んでる。


 2018年の売上高が1000億ドル「約11兆円」を超える強大な資金力に加え、技術競争力と中国政府の政治的後ろ盾を持つファーウェイに代わる企業は、世界的に見てもほとんど見当たらない。昨年同社を5G通信網から締め出したオーストラリアは、中国向け石炭輸出が中国側の通関手続きの遅延などで滞った。


 中国外務省は「全ての外国産石炭を平等に扱っている」と声明で主張し、「中国が豪州産石炭を禁輸したと決めつけるのは事実に反する」と反発した。ファーウェイを巡る対立は、第2次世界大戦後の安全保障体制の基礎であったファイブアイズ内の亀裂も浮き彫りにした。


 ポンペオ米国務長官は2019年5月8日、ハント英外相との会談後の記者会見で、次世代通信規格「5G」への中国の通信機器大手、華為技術「ファーウェイ」の参入について「我々は安全保障上のリスクがどこにあり、信頼できるネットワークで活動できるのかを保証する義務がある」と語った。


 同社の5G分野への参入を禁止し、同盟国に排除を呼びかける米国の考えを正当化した発言とみられる。グーグルによる論文で、世界が一変した。突然「量子超越性『クアンタム・スーパマシイ』」が現実のものになったのだ。量子超越性とは、古典的コンピューターが実用的な時間内に処理できない計算を、量子コンピューターが高速で実行することを指す。


 グーグルが2017年までに達成可能と見込みを発表したり、競合他社がそれに追従したりなど、長年到達間近と見られてきたマイルストーンである。しかし2019年グーグルの研究者らは「Sycamore『サイカモア』」と呼ばれる量子プロセッサーを用いて、初めて無作為抽出の問題を解いてみせた。


 現在最速のスーパーコンピューターでも1万年かかるという問題を「Sycamore『サイカモア』」は3分20秒で解いたという。小さな第一歩にすぎないが、最初のマイルストーンとして量子超越性が達成されたのだ。グーグルが量子コンピューターによる「量子超越性」を実証したことを最新の論文で正式に明らかにした。


 量子コンピューターが既存のコンピューターより優れていることを示す歴史的ともいえる研究結果だが、これに公然と反論したのがIBM。その異例ともいえる反論の真意とは。このグーグルが主張する「量子超越性の実証」にIBMが公然と反論。その理由とは、以下の通りだ。


 これに対してIBMの専門家グループは10月21日(米国時間)、量子超越性を達成したというグーグルの主張に重大な欠陥があると発表した。そもそもグーグルが、現代のスーパーコンピューターの能力を最大限に活用していないというのだ。IBMはブログでの投稿で、「このしきい値は満たされていません」と主張している。


 グーグルはコメントを控えている。量子研究のコミュニティがIBMの主張とグーグルの動きを精査するには、時間が必要になるだろう。ルイジアナ州立大学の教授であるジョナサン・ダウリングは、現時点ではIBMの主張に一理ありそうだと指摘する。


 ダウリングは、「グーグルは従来型のマシンでは解決が本当に難しいと思っていた問題を選びましたが、IBMはその問題がグーグルが思っていたほど難しい問題ではなかったことを実証しています」と説明する。IBMは独自に量子研究の計画を推進し、量子分野に興味をもつ企業とのパートナーシップに取り組む


 これと同時に、量子コンピューターのプロトタイプをこれらの企業とテストしてきた。そのパートナーの1社であるJPモルガン・チェースは、この夏、IBMの量子コンピューター上で金融リスクを計算する手法を見つけたという。


 IBMとグーグルの論争は、量子コンピューティングの矛盾した状況を表している。量子コンピューティングはここ数年で驚異的な進歩を遂げており、IBMやグーグル、インテル、マイクロソフトなどの企業が大規模な研究チームを構築してきた。

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