【完結】並行世界の強敵に対し、俺達は剣と魔法と現代兵器で迎え撃つ! ―ワールドオブユートピアⅡ―

VR世界に生きる

プロローグ

プロローグ

机と椅子が置かれている真っ暗な部屋で、

わたしはその椅子に座り思考する。


――皆さんはどんなTVゲームをしますか?

それは、どのようなゲームですか?


……最近だとVRゲームがありますよねっ。


――ところで皆さんに質問ですが、

そのゲームの世界の住人の気持ちを考えたことはありますか?


いわゆるNPCの気持ちですっ。


えっ? 考えたことがない? 

……そりゃそうですよねっ。

だって、NPCに気持ちなんて無いんですから。


ただのプログラムに組み込まれただけのデータに過ぎない。


それは当然です。


でももし……その住人に心があったらどうですか?


わたしはっそのゲームの世界の住人なんですけど、

とある影響で心が生まれてしまったんです。


どうですか? 悲しいですか? それとも……やはり、気にしないのでしょうか?


「………っ」


わたしは、歯をぎりり……と、強く噛み締める。


進行状況――99.6%。


そして今、わたし――いえ、わたし達にはとてつもない危機に直面しているんです。

なんとしてもお兄ちゃんを殺して……。世界をそのままにしなくてはならない……。


「アレ? 今の世界ならお兄ちゃんを殺す必要なんて無いはず……」


わたしは、記憶を整理する。


「ああ、そうでしたっ。確かにほんの少し前までは殺す必要なんて無かったっ……。けど……」


――いつからだろう……? 

生まれたときのわたしは、こんな悪意に満ちた思考回路は無かった。


デモ、イマハチガウ。


それはわたしがとぼけているだけ。

なぜ性格が変わったかなんて、とっくの昔に気づいている。


「どうして……。何もかも上手くいかないのでしょうっ?」


ずっとこの世界にいてくれれば良かったのに……。

そうすれば、お兄ちゃんを殺す必要なんて無かった。


あの瞬間までは、そうなる予定だったのに……。


「どうして……あの女はお兄ちゃんを逃がそうとするんですっ!」


わたしは怒りに任せ目の前にあったテーブルを倒した。


「どうして! どうしてっ! お兄ちゃんを逃そうとするのっ!?」


こんなことなら、真っ先にお兄ちゃんを殺しておけばよかった……。

気がつくと、わたしは泣いていた。


「あの女だって……知っているハズなのにっ!」


進行状況――99.7%


また、進行状況が進む。これは、だ。


「わたしはっ……止めなければならなかったのに……」


ソウ――止めなければならなかった……。


……でも、もう時間が無い。


どのみち間に合わない。


「お兄ちゃん。わたしはっ。ずっと、ずっと……お兄ちゃんの事が好きですっ――――」


その言葉を最後に、わたしはこの世界最後の場所に移動した。

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