第28話、決戦前日

その日、俺たち先発隊はガンダルカンに向けて出発した。

昼には母さんの演説があるがあり、皇帝も一緒に民衆の前に姿を表す段取りだ。


先発隊は魔法師30名と俺とモウジュさん、隊長級3名だ。

本隊は1日遅れて出発する。

先発隊は翌日朝ガンダルカンに入った。

隊長一人と魔法師3人が一組になり、本隊の隊長級に状況説明に走る。


俺とモウジュさんは、ミシティーの兵団長であったガルバ氏のもとに向かった。


モウジュさんが闇の中から囁く。


「ガルバよ」


「モウジュか、どうした」


「話がある、出てもよいか」


「無論だ」


モウジュさんと俺は闇から出た。


「そいつは?」


「ミシティーのジェシカ王女の息子だ」


「待て、ジェシカ王女が結婚してそんな時は経っていないぞ」


俺は、本来の3歳児に戻る。


「これでいいですか?」


「……」


「ここに、お主に宛てた皇帝の書がある。

まず、これを読め」


「なぜ、書面など……」


「いいから読め」


「……これは、本当なのか」


「昨日、ミシティーではジェシカ王女が国民に向けて説明しておる。

皇帝も一緒じゃ」


「にわかには信じられんが……」


ガルバ氏は顔面を蒼白にしている。


「ミシティーを攻めた理由にはなるじゃろ」


「だが、俺はミシティーを裏切った」


「ならば、その一命を賭して、偽皇帝の暗殺に手を貸せ」


「……俺は……どうしたらいいんだ」


「明日の早朝、魔法師団の本体が来る。

そこで、一気にかたをつける」


「だが、皇帝に魔法は効かぬぞ」


「障壁を破る手立てはある。100名が闇から攻めれば倒せぬこともあるまい。

それに、お主らも共に闇から攻撃してもらう。

魔法と物理、両面の攻撃だ。

それでダメなら諦めるしかあるまいて」


「時間は?」


「明け方三時だ」


「分かった、支度をして待機していよう」


「頼んだ」




次は兵団長だ。

俺たちは闇に潜り、兵団長の元を訪れる。


「……まことなのか」


「ミシティーを攻めたことも、これなら納得がいくであろう」


「た、確かに……あれほど親密にしていたミシティーを攻める道理はなかった。

それに、これは確かに陛下の字だ……」


「各隊長へも、今日中に連絡する」


「俺たちはどうすればいいのだ」


「何もするな。

事が終わったら、連絡するから皇帝側の人間を捕らえろ。

特に息子二人。

それと、十王8人の動向を確認しておけ。

皇帝側なのか判断できんからな」


「それだけでいいのか」


「逆に、目立ったことをして、悟られるほうがやっかいだ。

普段通りにしておれ」


こうして、決戦の準備が整った。

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