世界最恐の傭兵が臓器移植で高校生に転生した件。~王配成り上がり物語~

パンジャンドラム

第0話 プロローグ

『生まれた者には死が必ず来る。

 死せる者は必ずまた生きる。

 避けられぬことをなげなかれ』(*1)


「たっくん。はい。あ~ん♡」

つかさは、相変わらずブラコンねぇ♡」

 母娘おやこは知らない。

 大事な大事な弟が今後、死ぬことを。


「勇者様の居場所は、見付かりましたか?」

「殿下、残念ながら依然いぜん、行方不明です」

「そうですか……」

 北欧の王女の悲しみに忠臣ちゅうしんは、心を痛める。

(殿下の為に……必ずや)


「お前は、悪い女だ!」

「痛い! 止めて! お願い!」

 アルコール依存症の夫に殴打おうだされる妻。

 冷めきった夫婦に愛は無い。

 妻は自分の運命を呪い、救世主を望んだ。

(誰か、助けて……!)


「パパ……」

 軍属ぐんぞくの女性は、戦地に行ったきり帰ってこない父を想う。


「なに? また、ミス? シーラ、いつになったら出来るようになるの?」

「……」

「何、ガン無視なの? 二等兵にとうへいくせに?」

 から喋りたくても喋れない二等兵は、髪の毛をつかまれ、無理矢理、バリカンでられても声を上げない。

 地獄は続く。


「……」

 両目がうつろな情報将校じょうほうしょうこうは、静かにキーボードを打ち鳴らす。

「……う!」

 突如、悪夢がフラッシュバックし、トイレに駆け込む。

 そして、嘔吐おうと

「……!」

 便器の水面みなもは、吐瀉物としゃぶつで染まる。

 全てを吐き出した彼女は、静かに便器から離れ、洗面所に立った。

「……」

 約1年もの間に男性7人をも殺害した、アメリカを代表する連続殺人鬼の1人、アイリーン・ウォーノス(1956~2002)のような美人であるものの、疲れ切った表情が画面に映る。

「……男なんて」

 こぶしを振り上げて、女性は叫んだ。

「大嫌い!」


 彼女達は、未だ知らない。

 いずれ現れ自分達を幸せにしてくれる世界最恐にして、最高の夫を。


[参考文献・出典]

*1:ヒンドゥー教聖典『神の詩バガヴァッド・ギーター

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る