第14話『親子の再会は失われた記憶と共に』

 場を移して、100階『円型闘技場』


 英語のリスニングとスピーキングが苦手な僕が、英訳がそろそろキツくなってきたので、ここからは弥生による翻訳版をお楽しみください。


「『three spelling三連スペル』に『two spelling二連スペル』が勝てるわけない。『想像召喚』」

『想像創造』など、十二ある『想像技法』の中の一つ。比較的難易度が高い『想像召喚』によって現れたのは、水晶を持った、アヤカと同じ髪色の男。僕は、それを見て一瞬でアヤカのお父さんだと理解した。

「ここが日本か...。久しぶりだな、メアリー」

 と英語で言った。

 その言葉にアヤカは首を傾げる。

「どちら様ですか?それに、メアリーって?」

「そうか、記憶を消したんだったな。全く、面倒なことをしたものだ...『remember思いremembered出せrememberedっ!』」

(これが、『三連スペル』)

 地面から現れた魔法陣に包まれたアヤカが苦しむ。

「うっ、あっ。あーっ!」

「うん、記憶を消すのに強い魔法を使いすぎたな。取り消すために強い魔法を使わなければならない。時間がかかってしょうがない...」

「ねえっ!これ以上アヤカを傷つけるなら、力尽くで帰ってもらうけど?」

「その女の名は『』私の娘だ。私たちは『使』の脳獣だからな」

 そう話しているうちに魔法陣が消える。

「『daidiedね!』」

「『Invalidateinvalidatedinvalidated』」

「うっ...」

「思い出したか?メアリー?」

「私はメアリーじゃない。あなたの娘じゃない。今の私は、アヤのパートナー。『使』の脳獣『』よっ!」

「アヤカ!」

「うん。私はあなたアヤのために戦うよ『fastもっとfaster速く』『strongもっとstronger強く』」

「お前の二連スペルの実力はいい。私の元で三連スペルを学ばないか?こんなに強いんだぞ?ルージュ!『fastもっとfasterもっとfastest速く』『strongもっとstrongerもっとstrongest強く』」

「アヤ!『makemade』」

 彼女は普段僕が使っている剣よりも少し小さな剣を『二連スペル』で作った。

(こんな使い方もあるのか...想像創造の需要じゅようが......)

 それを受け取ったアヤは走る。仲間アヤカ魔法バフで速くなった足で、ルージュに近づく。しかし、『三連スペル』で強化されたルージュはもっと強かった。

「『想像創造』」

 ルージュが剣を作る。今アヤが持っているのに似た剣を。そして、それを振り上げ、下ろした。戦いが終結した。


「『想像治癒』」

 ルージュがアヤの手当てをしている。

 その横で、メアリーは彼女の父親と話し合っていた。

「嫌よ。絶対に嫌」

「何歳までそんな我儘わがままが通用すると思っているんだ!」

「私は、アヤの脳獣のアヤカなのっ!」

「やはり、日本に送ったのが間違いだったか、他国へ行けばお前の我儘わがままも少しは改善すると思っていたのだがな...」

「私は今まで生きてきた中で、あなたを父親だなんて思ったことは一度もないっ!あなたはいつも、魔法のことを考えていた。私たちの脳力『spellingスペリング』の使い方も知らないで、動物相手に、毎日魔法をかけて、殺してしまった動物は、そのまま放置。私とお母さんで埋葬まいそうしたんだよ!そんなに魔法が好きなら、魔法で殺してあげる!」

 アヤカは息を吸った。両手で胸の前に水晶を構えて、それを見つめる。その目からは、本気の殺意を感じた。

(止めなきゃ、何かヤバいのが来る)

 アヤは、気絶していた。ルージュは『想像治癒』に必死で気づいていない。他の所有脳獣達は、隠れ家に置いてきた。つまり、彼女アヤカを止められるのは、僕だけだった。

「やめろっ!アヤカー!」

「『breakブレイクbrokeブロークbroブロー』ックンー...!ゴホッゴホッ...うーっ...」

 アヤカは呪文を唱えながら、口から血を吐いて倒れた。

 それを見て、アヤカのお父さんは言った。

の力は強かった。強すぎて、私やの母親の力では、抑えきれなかった。だから私は日夜研究に勤しんだ。そして、『封印の呪文seal spelling』を編み出した。そして私はに封印を施した。衝動的な『three spelling三連スペル』で人を殺してしまうことがないように...。今、がここで『破壊の呪文break spelling』なんて使っていたら私はもちろん、君やルージュ、メアリーの相棒も殺しかねなかった。それほど強いものなんだ。私たちの、『three spelling三連スペル』は...」

「...」

「だから、私はを連れていく。そろそろも『three spelling三連スペル』を制御できる年頃だろう。君には、止める力も権利もないんだよ」

 僕は動けない。

 アヤカのお父さんがアヤカを抱き抱え、ルージュの元に運ぶ。

 二度と会えないかもしれない。と僕の直感が伝えた。

 そして、ルージュの側に立つアヤカのお父さんの足をが掴んだ。

「(アヤカを、私の大事な仲間を『それ』なんて言わないでください。勝負は勝負です。アヤカを連れて行っても構いません。私が我慢すれば済む話ですから。...ただ、謝ってください。アヤカに、『今まで酷いことしてごめん』って言ってください。あなたの家庭で何があったのかなんて知りません。他人の家の事に口出しする気はありません。でも、仲間アヤカが嫌な事をされても、それを見て見ぬ振りをして、他人のことだと割り切って、何もしないでいるのは、仲間じゃないと思うから。だから言わせてもらいます。アヤカに謝ってください)」

 その長文を英語で言った。僕には伝わらなかったけど、アヤカのお父さんには充分伝わったらしい。

 彼は、僕にも分かる英語で

「ソーリー」

と言った。

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