あなたの理想のヒロインが目の前にいるというのにどうして気づいてくれないの? ――思考提供、白井奏乃(美少女)

白玉ぜんざい

第1話 きいてくれよかなえもん!


 僕、桜木遊助は高校生になって初めて彼女ができた。


「よろしくね、遊助くん」


 男子からの人気は絶大。小さくて可愛くてでもちょっぴり小悪魔チックで笑顔がチャーミングでまるでナナ☆シスに登場する紗矢華のようにプリティーな女の子だ。きっとこんなにも可愛い女の子が彼女になるなんてことは一生ないかもしれない。

 だから、大切にしようと誓った。

 なのに。


「別れよっか、遊助くん」


 それが今日の今さっきの出来事だった。

 学校から出て、歩いている最中に「ちょっとコンビニ寄ろっか」くらいのテンションで急に言われたものだから最初何を言っているのか分からなかったけど俺の唖然とした表情を見て、伝わってないかな? みたいな顔して首傾げながら「だからね、別れよっか」って追い打ちのブローをぶっ放してきた。

 動揺して言葉が出なかった僕にいろいろ言ったその子は少し先で待っていたイケメンに駆け寄ってそのままどこかに行ってしまったのだ。

 そして立ち尽くすこと五分弱。


「……」


 ようやく理解が追いついてきて頭がせっせと働き始めたのが今、この瞬間。

 僕は走り出した。


「急に別れようってそりゃないよ! まだ一週間だよ? 付き合おっかって言われたときにはあまりの感動に泣いて跳ねて思わず持っているフィギュアとギャルゲーを全部捨てようとさえ思ったくらい喜んで一生大切にしようと誓ったというのに! この一週間結構楽しい時間一緒に過ごしたよね? 放課後も一緒に帰ったし休みの日はデートもしたじゃん! 笑ってたじゃん! なにあれ、(笑)ってことだったの!? ずっと失笑していただけだったの? いつまでもこの楽しい日常が続くと思っていたのに! ラノベにしたなら七巻くらいはイチャラブすると思っていたのに! 日常というのは突然終わりが訪れるとかデビルクロニクルのデビットが言ってたけどそれってこういうことだったのか!? まだキスの一つもしてないんだよ! せめて振るならもうちょっとシチュエーション選べ! 放課後の帰りに、マック行こうぜみたいな感じで言ってくるな! ちょっとは質疑応答の時間を設けろ! そりゃ動揺して言葉が出なかったこっちにも否はあるかもしれないけどちょっと待て! しかも最後ちらっと見えたあのイケメンもしかして新しい彼氏か? だとしたら俺に勝ち目なんてないじゃないかバカヤロおおおおおおおおおおおおおおおおおおおう!」


 涙を流しながら僕は家のドアを開けて中に入る。

 靴を脱いで玄関の前にある階段をドタドタと音を立てて駆け上がった。その先にあるのはとある部屋だった。ドアには「かなの」と書かれたプレートが掛けられているがお構いなしに俺は中に突入した。


「聞いてくれよかなえもん!」


 泣きながら、俺はかなえもんの腰に抱きついた。

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