第5話

 綱編と姫井はオコメヒメによって神の神殿より運ばれた。

 徒歩で。

 偉大なる豊穣神オコメヒメには瞬間移動魔法も飛行魔法も必要ない。目的地まで行くには徒歩で十分なのだ。

 オコメヒメはそれなりに涼しい。丘陵地帯を選んだ。


『水源がないのう。これでは農産物が育てられんではないか。よいしょ』


 オコメヒメは軽く地面を抉って穴を掘った。大量の土が掘れる。

 手で。

 偉大なる豊穣神オコメヒメにとってこれくらい素手でできる。


『底の方に粘土を溜めて。少し離れた場所にある湖から水を貰ってきて。まぁこんなもんじゃろ』


 溜池ができた。偉大なる(以下省略)


『水路を造って』


 指で地面をなぞる。凹みができて水路ができた。


『ここら辺に田んぼ。まぁこういう感じでええじゃろう』


 指先で軽く地面を抉り、手の平で慣らした。


『儂が趣味で造っておったプラモデルの民家と納屋のセットを設置して』


 和民家及び納屋を置いた。


『最後に人間の男女を設置』


「なんのシュミレーションゲームをしているんだこの神様は・・・」


『時間を操作する力で速めれば人間が増えたり街がポンポン発展する光景を眺めて割と楽しいのじゃぞ?では姫異よ。後を頼むぞ』


「はい。お任せくださいオコメヒメ様」


 オコメヒメは瞬く間に歩き去って行った。彼女が聖殿に戻るのに瞬間移動の魔法など必要ないのですよ。歩くだけ充分なんですよぉドヤア。


「それではとりあえず稲作の準備を始めましょう。綱編様。オコメヒメ様より頂いた種もみがありますのでそれを用いて」


「任せろ。この種もみを撒けばいいんだろ?」


 綱編はオコメヒメが開墾したばかりの田んぼに向け、種もみを『もみのまま』ばら撒いた。


「何なさっているのです?」


「見ての通りさ!種もみを田んぼに撒いているんだ!きっと秋には沢山の実が実るに違いないっ!!」


「なるほど。食料がなくて秋に飢え死にした理由が早くもわかりました」


「なにっ!?どういうことだっ!!?」


「種もみはその状態では育ちません。一旦水分を吸収させて発芽させてから田んぼに植えるんです」


「そうか!水を与えてやればいいんだな?!わかった!!」


 綱編は種もみを今度は用水路にぶちまけた。

 姫異は綱編を殴って気絶させた後、種もみを可能な限り用水路から回収する事にした。

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