絲
紫鳥コウ
1
ふたりを乗せたバスは、あたたかい香りをまとっていた。
山道をこえて、ようやく、
だんだんと
白煙が
旅館までのゆるやかな坂道を、ひとりは、かろやかな足取りで踏んでいく。もうひとりは、その背中を見守りながら、ねむたげな影を
紅い
「ねえ」
エレベーターを降りると、
「この後、街を見にいかない? わたし、ここに一目ぼれしちゃった。良いでしょう?」
月人は、予約した食事の時間まで、部屋で、ゆっくりと過ごそうと思っていたところだった。
「いいよ。でも……少しだけだよ。食事の時間になる前に戻ってこないと」
「やった! じゃあ、荷物を置いたら行きましょう。お金も持っていかないとね」
シャーロットは、くるりと軽やかにふりかえって、自分の部屋に入っていった。それを見届けてから、月人は、自分の部屋の鍵をあけた。
ノブにふれたとき、月人のこころが、ひんやりと痛んだような気がした。
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