19.助っ人 青木君

「それで、昨日は大した案はでなかったけどどうするんだい? やはり教科書を全部覚えるしか……」

「大丈夫だ、今日は助っ人を呼んだんだ」

「助っ人……?」

「いたいた、お前らいつもここで飯を食ってたのかよ」



 里香がキョトンとした顔で首をかしげると同時に、いつも里香と食事を取っている空き教室に軽薄そうな声が響いた。てか、この表情の里香は無警戒って感じで可愛いな!!



「いやー、二人の愛の巣にお邪魔して申し訳ないなぁ。俺、邪魔じゃない?」



 そう言って入ってきたのは長身で軽薄そうなやつは、バスケ部の同期の青木だ。俺と同様に二年生でレギュラーになっていることもあり、部活で一番仲がいい友人である。中学も一緒だったしな。そしてこいつもまた里香と同じ、特進クラスである。



「愛の巣ってなんだよ……俺達はただの幼馴染だって言ってるだろ。今日はありがとう、ちょっと力を借りるけどいいか?」

「ふーん、ただの幼馴染か……大和はただの幼馴染にあんなことを言うんだな」

「里香……あの時の事は……忘れ……いや、忘れられるのは嫌だな。くっそ。悪いかよ」

「別に悪いなんて言ってないさ、絶対忘れないから安心するんだよ」

「あれ……? お二人の関係ちょっと変わったみたいだなぁ。やまとぉーあんなことって、何をいったの? 教えてよ」

「いいから作戦会議をするぞ。昼休みは限られてるんだ」



 俺のただの幼馴染と言う言葉に里香は意地の悪い笑みを浮かべながらいうと、それに便乗するかのように青木もニヤニヤしはじめた。くっそ、青木には絶対勘違いされた気がする。でもさ、俺は青木が俺達をみて一瞬だけ何かを見守るような優しい、それでいて嬉しそうな顔をしたのを見逃さなかった。これだからこいつは憎めないんだよな。



「俺的には二人がより仲良くなったようで何よりだよ。それより、ラインで聞いたけど、灰崎の情報だよね。この前のテストの順位は65位、帰宅部。まあ、特進クラスでは中の下かな。多分国語だけなら大和のが上だと思うよ」

「へぇー、青木君は詳しいんだな。彼とは親しいのかい?」

「いや、クラスメイトだし、隣の席だからね、そのくらいは知ってるさ。ちなみに……赤城さん、俺の事は知ってるよね。中学も一緒だったんだけど……」

「ああ、もちろんだよ。大和としょっちゅういっしょにいたから覚えてるさ。名前は青木君だろ。大和と同じバスケ部だよな」

「あー。やっぱり、大和関連で覚えられてんのね……本当にお熱いねぇ」



 里香とのやりとりを聞いて青木は、にやにやと笑いながら俺に耳打ちをする。



「大和は愛されてるなぁ、これで付き合ってないってうそでしょ? 今回の件も、赤城さんのためみたいだし、テストに勝ったら告っちゃえよ」

「お前な、簡単に言うなよ……」



 ちなみに青木には俺の里香への気持ちはばれているし、今回の件の事情もすべて話している。軽薄そうなやつだが、信頼できる人物なのだ。里香をのぞけば一番親しい友人だろう。確かに催眠術のおかげもあってか、今の俺と里香は結構いい感じだと思う。でも、俺達の関係を進めるのはテストが終わってからだろう。今は灰崎の件が優先だ。



「しかし、65位か思ったより上だったな。このままじゃまずいな、なんとか考えないと……」

「だからテスト範囲を全て……」

「里香は自分の頭の良さを理解してくれ。普通の人間には真似ができないんだよ」

「ふーん、大和ならできると思うんだけどな」



 俺の言葉に彼女は唇を尖らせた。こいつの俺への評価高いのか低いのかわからんな。実際の所一か月あればなんとかなるかもだが、さすがに一週間ではむずかしいだろう。俺が唸っていると、青木が肩をたたいてきた。



「困った大和に朗報だ。テスト範囲なら俺が大体予想しているよ。てか、テスト範囲広すぎるからね、ある程度教師たちの言動と性格で予想しないと勉強が間に合わないのさ」

「さすが、頼りになるな!! いつもやらかしたことのしりぬぐいばかりさせられて、こいつふざけんなっておもっていたけど、今はじめてお前と友達で助かったぞ!!」

「あははは、大和ってば俺にはくっそ厳しいよね?」

「あははは、他校のマネージャーをナンパして、他校の先生に説教された時に、俺も一緒に怒られたの忘れたとは言わせないからな」

「ふーん、二人はずいぶん親しそうだね、それに大和もナンパしてたのか……」

「ひぇっ!! 赤城さんってこんな顔もするんだね。いつも、他人に興味なさそうにしてたからびっくりだよ」

「そうか、結構怒りっぽいとこもあるぞ。この前だって……」

「余計な事は言わなくていい」



 俺と青木が軽口をたたいている里香が不機嫌そうに、唇をとがらせた。顔がきれいだからかこういう時ちょっと迫力があるな。でも、嫉妬してくれてるんだよな? いや、青木との関係に嫉妬してるのか? とにかくこっち系のネタは避けた方がよさそうだ。青木もビビったのか、俺の背後に隠れている。



「じゃあ、青木テスト範囲を教えてくれるか?」

「おっと悪いが俺もボランティアじゃないからさ、ただで教えるわけないかいかないんだよなぁ。そうだな、赤城さん冷たい目で罵ってくれない?」

「うわぁ……」



 こいつそんな趣味があったのか……いや、結構思い当たるふしあるな。しかし、里香がゴミをみるめでみているけどいいんだろうか? すごい勢いで青木の評価が下がって言った気がする。



「いい!! その目だよ。さあ、そのまま罵ってくれ」

「いや、普通に考えていきなり罵倒なんか出るはずないだろ……所詮大和の友人だね、やはり類は友を呼ぶんだな……」

「いや、待って、なんでそこで俺を見るんだよ。おかしいだろ」

「メイド服……」



 理不尽だろうと思ったが里香のボソッと言った一言で納得してしまった。確かにメイド服を着せて、ふとももにキスをしようをしようとしていたな。冷静に考えたら俺のがやばくないか? でも、あれだ。あれは里香のメイド服が素敵すぎるんだ。俺は悪くない。



「じゃあ、俺を大和だと思って罵ってよ、お題は涼風ちゃんに大和がセクハラしました」

「は、だらしない顔をしてるじゃないか? そんなに胸がすきなのか? メイド好きの変態め」

「ポンポン出てるんじゃないか!! ふざけんな、人の性癖をばらすなよ」

「ふ、いい罵倒だった。お礼だ、あとで大体の範囲は連絡するよ。あとはやるからには絶対勝てよ」



 青木は満足そうに笑った。青木はめちゃくちゃ嬉しそうだけど、なんか俺の精神ダメージがでかいんだがきのせいだろうか?




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る