第36話「え、なんでですか」


近々開催される文化展にて、国王側近に就任したことを国民に公表するらしい。


それにあたり、その挨拶を考えなければならないのだが・・・。



「全くわからん」



ということです。


マジでこういうことに慣れてない上に、カリホルニウム王国の国民性もまだ理解しきれていない。


こんな状態で、挨拶用の原稿なんて書けるはずもない。



「それで、私のところに来たのね」


「そういうことです」



一人で考えても仕方ないと思った俺は、いさぎよくパルマのところへ助けを求めに出向いた。



「んでも、なんで私なの?」


「まぁ同い年で話しやすいって言うのと、スピーチの聞き手は貴族じゃない人が多いですからね。こんな言い方、気に触るかもしれないけど、元々貴族じゃなかったパルマさんのアドバイスがほしくて」


「そ、そうだったんだ。ありがとうな」



おぉ、訛ってる(笑)。



「え? 急にどうしたの? というか、お礼を言うのは普通俺の方だと思うけど」


「あいや、そういうわけじゃなくてね。うん。付き合うから、どんな感じにしたいのか言って」


「あ、うん。とは言っても、どんな感じにすれば良いのかすら分からないんだよね。冗談交じりのちょっとふざけた感じがいいのか、それとも一から十まで真面目がいいのか」


「あー・・・。どっちでもいいと思うよ」


「と、言うと?」


「だってほら、人によるじゃん?」


「そりゃそうだけどさ、より多くの人に支持されたいからさ」


「別に、大衆から支持される必要はないでしょ」



そう言う考えに至るあたり、さすが立憲君主制・・・。


とはいえ、国民から冷たい目で見られるのは気に入らないな。良い気もしないし。



「支持率は気にしなくても、印象は良くしたいじゃん?」


「だったら、ラフな感じが良いんじゃない?」


「大丈夫なのか? ラフな感じにやっても」


「どういうことですか?」


「あいや、俺って文化展がどんな行事なのか知らないからさ」


「それなら問題ないですよ。だって、主催者があのエマ様ですから」


「それは納得だ」



エマが主催者で、真面目という文字はないだろう。完全に偏見だけど。



「んで、その内容なんだけど」


「それはご自身でお考えください」


「ここで投げ出すのかよ」


「いやぁ、正直な話、私もそこらへんはよくわからないんですよね」


「できれば、一緒に考えてくれれば助かるんだけど」


「え、なんでですか?」



なんかフラれたみたいで、心にくる一言である。


聞くと、どうやら文章構成なんかは苦手らしい。


まぁそういうことなら仕方がないか。


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