第31話「エマ様が仕事サボるので」
夜の一時、訳があって、俺はベッドで寝付けないでいた。すると、エマの養子の子であるパルマから電話がかかってきて、話し相手になってくれると言う。
というか、パルマ自身がそれを望んでいたので、俺は断りきれず・・・というか、まぁ断る気などさらさら無かったわけだが、何がともあれ、そのお誘いを承諾した。
ここまでは良かった。
「・・・」
「・・・」
わかるだろ? そういうことだ。
「あはは、話すこと、改めて考えるとないね」
パルマが苦笑いながらそう言う。
全く話題が見つからず、先程から電話越しに気まずい雰囲気だ。
「まぁ、今日の昼間に知り合ったばかりだからな」
「そういえばそうですね」
「忘れてたのかよ」
「あはは。私は秋斗様のこと、以前より何度か見ていたので」
「え・・・? そうだったの?」
「国王側近というのは、それだけ目立つということです」
「なるほど」
まぁこの国では、上から三番目の身分だからな。
そりゃ目立つのも当然か。
「あ、話題ないなら、パルマさんのことで少し質問してもいいか?」
「もちろん良いですよ」
「ありがと。んで、パルマさんは、政府関係者なんだよね?」
「そうですけど」
「なんの仕事をしてるんだ?」
まさか、大臣ってことはない・・・よね?
でも、俺が認知している大臣は、財務大臣、経済産業大臣、国土交通大臣の三人だけだが、その三人とも二十代という事実。
この分だと、十七歳のこの子も、大臣という可能性は否定できないが・・・。
「私は国税庁の長官ですので、その仕事をしていますよ」
うーーーーーん。
大臣では無かったが、長官か・・・。
この国って、なんで責任者が若い人な場合が多いんだ?
まぁ国王のエマが若いからってのが大きな要因だろうけど、それでも、こんな若い人たちが政府の官僚ってのもねぇ。
まぁ年老いじゃないとダメってわけでもないし・・・うーん。
重要なのは、バランス、ですかね(適当)。
「た、大変ですね」
とりあえず労っておく。
「大変じゃないですよ」
「そうなんですか?」
「はい。エマ様が仕事サボるので、こっちの仕事量も必然的に減ってますし」
あの野郎・・・。
パルマもパルマで、完全に皮肉を言っているようにしか聞こえない。
まぁそりゃ、中間管理職ってそんなもんだよな。
上からも下からも圧がくる。
「すみません。もっと仕事させるように言っておきます」
「いえいえ、ほんと、仕事が円滑に制御できないだけで、ほんと、大丈夫なので」
声のトーンとか、その他諸々がだんだんフェイドアウトしてますけど!?
「ほんと、エマにはよく言っておくので。あと、俺も極力、そちらの公務に貢献できるよう尽力を尽くしますので」
「あ、本当ですか?」
「はい。もちろんです」
「ではでは、早速お願いがあるんですけど・・・あっ、いま仕事の話をしても大丈夫ですか?」
「良いですよ」
わざわざ仕事の話をしても良いかと了承を得るのは、公私混同に配慮してのことなのだろうか。
細かい気遣いだけど、結構重要なことだよな。
「あのですね・・・増税を、してください」
重々しい一言であった。
「国税庁だから、やはり税の話か」
「赤字ギリギリも大概にしてほしいです」
「それはこっちも思ってるんだけどね」
「こんな状態で、もし災害とかが起こったら、政府は間違いなく財政破綻しますよ」
「あー、そういうこともありえるよな」
あまり意識してこなかったが、災害だけでなく、不況やその他諸々。
どの道、国家の非常事態に備えて、貯蓄というのは必要だ。
「パルマさんは、何か良い案とかありますかね?」
「増税のことですか?」
「そうそう。新しい税目を作るとしたら」
「そうですねぇ、私が考えているのは、輸入品に税金を設けるとかですかね」
輸入品・・・輸入品!?
「それだぁぁぁぁあ」
「へ?」
「忘れてた、関税だよ! 関税!」
「あ、はい? 関税?」
「輸入品に対しての課税。こうすることによって、高価な国内製品の不買化も防げて、国内産業が活発になる!」
「お、おぉ・・・!」(←理解してない)
「そうと決まれば、忘れないうちに具体化しよう!」
「あ、はい。でしたら、私も参加させてもらいますよ。一応 国税庁の長官ですし」
「そりゃ助かる」
とりあえず、ノートな方のパソコンを立ち上げてから、パワポを駆使して企画をまとめる。
「ちなみにだが、この国の輸入品ってどんなものがあるんだ?」
「海外からですと、食品類などはもちろん、資源や製品など。まぁありとあらゆるものですね」
「なるほど・・・。国内で資源は採れないのか?」
「採れますけど、工場地帯は海沿いに発展してますし、鉱山などは山奥ですし」
お互いに距離があり、有効活用が出来ていない感じか。
これも課題だよなぁ。
そもそも、海外と貿易をしている都市も少数なため、あまり大きな税収は見込めないほか、あまり高い関税をかけると、国内産業にも傷ができてしまったり、他国との交友関係に傷がついてしまう可能性もある。
「慎重にやらないと、ですな」
「まぁそうですね。ほとんどの工場は、資源を輸入して、その資源を使って製品を作っていますから」
日本と似たようなやり方か。
「博識なんだな」
「え・・・いや、そんなことないよ」
急にタメ語だな。まぁ良いんだけど、というか、こっちの方が可愛い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます