第7話 魔物との戦い



そんなこんなで竜の巣の麓の村に到着しちゃいました....。

ここからは歩きで山を登るらしい。

馬は怯えて登れないからだ。


くそっ、俺もお留守番してぇぞ!


「ネフィ、必要ないかもしれないけど、ほらこのローブかぶっとけ。守りの魔法陣を刺繍してあるから。自分の魔力を流せば、防御になる。」と俺が夜なべして作ったローブを渡した。


「え、アレク刺繍もできるの?!嫁に行けるねっ!私の嫁になるかい(笑)?」と冗談でも遠慮したいことを言い出すネフィ...。


「遠慮するわ。残念だがノーマルだ。役不足だ。ほんとに残念だ。」と死んだ魚のような目で俺は棒読みで断った。


「そっかぁ、それは残念。ローブ、ありがと。でも私2000以下の魔力しかないから常に魔法陣起動できないや。いざって時に使わせてもらうわ。」とさらっとびっくりする事を言った。


「えっ、2000もないの!?転生特典とかないの?それとも、貯金2000円もなかったのか?」と、ただただ驚いてネフィに問いかけた。


「あはは。私、30歳まで処女じゃなかったし?魔法少女特典はなかったな。だけど、スキル持ちだよ!鑑定はこの世界にないみたいだからこれが特典じゃないかな。」とあははと腹を抱えて笑いながら、バシバシ俺の背中をたたきまくった。


いってぇし!なんだよ、リア充だったんかい!けっ。


そんな下らない魔法使い談義をしていたら、空気が変わった。

「ネフィ...。なんかくるぞ。」

「そうだねアレク....。強い瘴気が、ビシビシ感じるね。」

二人で構えてあたりを警戒する。


ネフィは右手にレイピア、左手にブルウィップを持ち魔力を流して備える。

俺は、左手に魔力塊をだし、右手で防御壁を構築し展開した。


くるっ!!


お互いに緊張感を高めた瞬間、そいつは現れた。ずるずるっと、地面を這う音が近づいてきてガサッ!っと魔獣が出てきた。


「キングコブラだ!!」


第2級危険種で、騎士団なら1個小隊が必要になる戦力だ。

全長30mもあり、舌が長く手足のように縦横無尽に動くので、戦いにくい。だが一番厄介なのは、体液全てが毒であることだ。

舌に触れれば、接触部が強酸により溶ける。武器や、鎧も全てが溶ける。皮膚にあたれば火傷だ。

体を一刀両断して血しぶきがかかると、同じことが起きる。

とにかく倒す過程が厄介な魔獣だ。

騎士団なら、舌を引きつける組と離れた場所から、投擲で体を潰す組みに分けられる。

動けなくなったところを、全身覆われた重装備で首を一刀両断する。

防御壁を張れる魔法使いがいれば、最後はもっと楽に首をはねれる。


初めから魔法使いが防御壁を展開すれば楽に殺せると思うだろう?

他の魔法使いは魔力が少ないので、動きながら防御壁を展開できるやつがいない。ネフィでさえ、ずっと魔力を流し続けるのは至難の技らしいしな。

基本魔法使いが防御壁を張るのは絶体絶命の時くらいらしい。

殆どが遠距離魔術で攻撃専門、回復ができるやつは回復専門になる。

魔力をチームで効率よく使う、それがセオリーだ。


だが俺は魔力が半端ないので問題ない。動きながら防御壁を展開できるからな。


「ネフィ、こいつ俺ら丸呑みしようとしてるなぁ。どうやってとどめさす?」


キングコブラは半球状の防御壁の上から、ギチギチと牙を立てて捕食しようとしている。


「うーん、アレクがグラビティをかけて拘束したところに私が魔力コーティングした鞭で首を切り落とすって感じでいいんじゃない?アレク、私の周りを全部覆う防御壁の鎧をお願い。」

「ん、わかった。」


『重力増加グラビティ!』

ズドンっと、蛇の体が地面にめり込んだ。


「できたぞ、ネフィ。頼む。」

「オッケイ!」


ネフィの鞭が、魔力を通して真っ赤な紅蓮色に変わった。


パシーんッ!  ゴロリ。

蛇の頭がころがった。


血しぶきがしばらく出続けるので、防御壁を展開し続けながら後処理をする。

土魔法で亡骸を埋め、地中で燃やす。

燃焼ガスも毒になるので、近隣に迷惑がかかることがあるからだ。


酸素の膜を蛇に纏わせてから、土をかぶせて

『業火ヘルファイア』


ごおっと地面の下から炎がチラチラと見え、土がドロっと溶けた。即席マグマの出来上がりだ。


「なぁネフィ?

竜の卵を食べにきた蛇だったのかな?それとも食べ終わって下山してた途中かな?」

どっちだと思う?と俺はネフィを見た。


「ふふ、わかっていってるでしょう。下山してきた1択!」


「だよなぁ。ここに竜が降りてきてるってそういうことだよな。」


「もう、燃やしちゃったから卵が無事であっても茹で卵ね。」


「この場合は、俺が攻撃対象になるのかな??」


「さあ、どうだろう。とりあえず、私たちに攻撃してきてるね。」


今の状況を伝えると半球状のドームに、ドラゴンブレスが2匹分当たり続けている。

何この状況??おかしくね?


「俺、ピクニックに来たんじゃなかった?なんで攻撃されてるんだ。逃げるか?

だが、このまま村に帰ったら阿鼻叫喚だよな...。」


「うーん討伐かねぇ。ヘイトついちゃってるもん。」


「こいつらの心情考えると討伐したくないよな...。ネフィ、適度に痛めつけて帰ってもらわないか?

俺がやると手加減できないからネフィよろしく。俺ここで見てるから。回復魔法とかはかけてやるし。」


「オッケイ!じゃあ、ドームから出るね!」とネフィは全身に身体強化をかけて飛び上がった。


おおっ、速いな。もうドラゴンの上に居る。とりあえず、俺は様子見だな。ネフィの攻撃が全く効かなければドラゴンにデバフして、ネフィにバフをかけなきゃな。

ちょっと早いが、ご飯にしよう。食べれるときに食べなきゃ、この肉サンドうまいな〜。

ほう、衝撃波だ。ネフィすげ〜。ドラゴンのヘイトが完全にネフィになったな。

ドラゴンは、ちょっとだけ傷ついたかな?

うん、デバフしよう。


『防御力低下ウィーケン』ぽふんッ。

白いモヤが上がった。


おおっ、すごいなぁ。今度はちゃんと傷ついた。

少し出血してる...。ごめんな、ドラゴン。


そういや、ネフィ空中にいるときの方向転換ってどうやってるんだ?んん?

うわぁ、自分に攻撃魔法を撃って方向変えてるのか。痛そう..。

ちょっと回復魔法飛ばしとこうかな。

『ショット!ヒール』

ネフィがキラキラしてるから成功かな。


デザートは、何かな。

パンプディングだ、うまぁ幸せ。もぐもぐ、ごっくん。

俺が幸せを噛みしめてると、先ほどマグマになって固まった場所から音が唐突に聞こえてきた。


ごぼっ!ごぼぼぼぼ。 ボコッ

「!???」

なんだ?土が盛り上がってきたぞ。


ぽこん!

「はぁ?」

目が合ったぞ....。なんだあれ?


ぽこん、ぽこん!

羽と尻尾がでてきた...。


『ギャォォォォォォォォ!!』

鳴いた!?

めっちゃ小さいドラゴンが、でてきたぁぁぁぁっ


手のひらに乗る大きさのドラゴンが土から出てきて、俺の方にとてとて近づいてきた。

ぁ、防御壁にぶつかった。キューキュー言ってる。

ちょっと防御壁に穴を開けて入れてやると、俺の膝にちょこんと座ってきた。

パンプディング食べるかな?

ぽいっと口に入れたら、食べた。

うん、可愛い。


「これって、あいつらの子供かなぁ?週足らずで生まれると小さいのか?」

うーん。わからん。



チビ竜はパンプディングをありったけあげたら、お腹がいっぱいになったみたくスヤスヤ寝だした。

親認定されたかな?

ヨイショっと抱えてとりあえず2匹のドラゴンの前に出てみることにした。

子供返したら、帰ってくれるかもしれないしな。


「おーい。このチビ助、お前たちの子どもで合ってるかぁ???」


ドラゴンもネフィも白熱してて全く気付かない...。

無視するな、お前たち!


『重力増加グラビティ』

ドラゴンたちを地面に叩きつけ、目の前にチビ助を見せてやった。


「言葉通じるか?これさっきの蛇の中からでできた。お前たちの子どもか?」

すると、竜の目から涙が出てきた。


俺はそろっと親竜の前にチビ竜を降ろした。

そして、グラビティを解除してやる。

親竜はパクっと子どもを咥えて空高く登って帰って行った。


「茹で卵になってなかったね。」とネフィがスタンっと木から降りてきた。


「だな。ネフィ、帰るぞ。もう竜の戦い身近で感じられただろう?」と帰路に着くことにした。


帰りは時間があったので、途中少し観光しながら宿に泊まったりして楽しみながら帰った。

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