夢の中の男は、僕のいるこの世界をギャルゲーだと言っていた。

ぐっちょん

第1話

「く、クライ様、申し訳ございませんでした」


 メイドが僕に向かって土下座をしている。しかも、そのメイドはなぜか全裸だ。

 全裸のメイドが床に頭を擦り付け何度も何度も謝罪の言葉を口にする。


 ――何? どうなってる?


 僕は酷く乱れたベッドを背景にして、ぼっーっとしていて働かない頭を必死に働かせた。


 ――――

 ――


 家族との夕食を終え、自室に戻ってきた僕は寝巻きに着替える。


「クライ様、失礼しますね」


 とはいっても僕は動かすじっと突っ立っているだけ。いつも僕の専属メイドであるアンナが着替えさせてくれるのだ。


 僕は上着を脱がせやすく脇を少し広げる。すると、アンナが僕の着てきた上着に手をかけボタンを一つ一つ丁寧に外していく。


 これはいつもの光景なので特に何か思うこともない。僕はただ待つのみ。


 ――?


「……あれ?」


「クライ様、どうかされましたか?」


 それはたまたまだった。


 僕が何気に視線を漂わせた先にある姿見、その姿見に写る自分の姿に違和感を覚えたのだ。正確には僕その瞳にだけど。


「あ、いや、ほら。僕の右眼が、なんだか赤くなってるような気がするんだ」


 僕はクライ・ネックラ。歳は十二になる。


 ネックラ子爵家の嫡男で、二つ下には弟のクロイがいるが、僕の瞳は両眼とも黒色だ。


 当然父のマクロもそうだし弟のクロイもそう。ネックラ家は代々黒髪黒瞳の者が多い。

 例外は嫁いできた母だけ。母だけが茶髪茶瞳なのだ。


「右眼が赤いのですか? 何かの拍子に擦ってしまったのでしょうか?」


 心配そうな顔をしたアンナが僕の顔を覗き込んでくる。


 でもさすがはメイド、僕の右眼を確認しながらも、着替えの手を休めることはしない。


「……たしかに、赤くなってますね。クライ様の右眼だけ、なぜ右眼だけが赤く……!?」


 まじまじと僕の瞳を覗き込んでいたアンナの動きがピタリと止まる。


「? ……アンナどうした?」


 突然動きを止めたアンナを不思議に思い、問いかけてみるもののアンナからの返事はない。


 右眼が赤くなっているくらい大したことないだろうと、軽く見ていた僕はだんだんと不安になってきた。


「アンナ。もしかして僕は病気か? 右眼が赤いのは病気なのか?」


「……はぁ、はぁ……くらい、様」


 アンナは僕の問いに答えることなく、じっと僕の瞳を見たまま息を荒くしていく。


「? アンナ、どうした? 苦しいのか? 具合でも悪くなったのか?」


「はぁ、はぁ、はぁ、くらい、さまぁ……」


 息が荒くなったアンナが少し心配になった僕は、そんなアンナの顔を覗き込むと、


 ――っ!?


 息を荒くしたアンナの顔がなぜか色っぽく感じてしまった。


 アンナに対してこんな気持ちになったことは今まで一度もない。


 この時僕はアンナに対して初めて胸の高鳴りを覚えた。


 トロンとしながらも色っぽい表情をするアンナの顔は頬が紅色に染まり、なぜだか、とても可愛らしく思えた。


「はぁ、はぁ、くらいさまぁ……ふふ……ふふふ」


「ん!?」


 ――ひぃ!?


 でも、そんな淡い思いもすぐに砕け散る。可愛らしく思えていたアンナの仕草に寒気を感じてしまったのだ。


 まるで僕を捕食しようとしているかような獣の目。獲物を捕らえて喜ぶ捕食獣のような笑み。アンナが僕を見てペロリと舌舐めずりをしたのだ。


——違う……違うよ。こんなのアンナじゃない。


 ぶるりと身の危険を感じた僕は、目の前で笑みを浮かべつづけるアンナがだんだんと恐ろしく思えてきた。


「あ、アンナ。だよな……?」


「もちろん、私はあんなですよぉ。はぁ、はぁ、もう……だめ。です。もう我慢できません……」


 ――え、どうして……


 アンナが突然自分の服を脱ぎはじめ、僕はそんなアンナの行動が理解できずに固まる。 

 すぐにアンナの豊満なお胸が露わになが、僕に構うことなくアンナは服を脱ぎ続ける。


 アンナは僕の背中を流す時でもタオルで隠していたのに、それが今目の前で露わになっている。


「ちょ、あ、アンナ。ダメだよ」


 そんなアンナのお胸を不覚にもキレイで触れてみたいと思ってしまったけど……


「くらいさまが……ほしいのです。くらいさまが……」


 全てを脱ぎ終えたアンナの次の行動にそうも思っていられなくなってしまった。


「ふふっ」


「!?」


 アンナが僕の右手をガッチリと握りしめたかと思えば引っ張る。それが意外ないほど力強い。


「うわっ!?」


 引っ張られた僕はベッドへと倒れた。


「アンナ何を……っ!?」


 すぐに僕の身体に覆いかぶさるように跨がりアンナは僕の両手足を押さえた。


「ふふ、ふふふ……」


「ま、待て、アンナ、アンナってば」


 貴族の子女は男女の営みについても早くから家庭教師に習っている。


 だからここまでくれば流石に子供の僕でも、アンナが何をしようとしている分かる。


「あんなはうれしい、うれしいです」


「アンナ……ダメだって」


 抵抗する間もなく僕の服は剥ぎ取られて全裸にされてしまった。

 手際のよさはさすがメイドといったところだろうけど、今の僕に余裕はない。


「ふふふ……もうはさない。わたしのくらいさま。ふふ、ふふふ」


「ひぃ、ぃぃ……」


 それからアンナが僕の身体の隅から隅まで貪るように舐め回すが、それだけで終わるはずもない。


「ああん……くらいさま」


「くぅぅ……あぐっ」


 そう僕はアンナに欲望のままに襲われつづけたのだ。


 その行為は十二歳の僕には激しく、アンナが気持ち良さげに蕩けた表情を浮かべていても、僕にとっては千切れてしまうんじゃないかと思うほどの激しい痛みに顔を歪めてしまう。


「あぐっ……ううう……」


「はふぅ……ああん」


 アンナが快楽で声を上げているが、その声はどこか遠くに聞こえる。


「……んっ」


「……ぁぁ」


 とうとう僕は長く激しい行為に耐えきれなくなり意識を手放すのだった。

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