そらはこんなにも広いのに

華月 雨

第1話 少年は流れ星と出会う

蒸し暑いセミの鳴き声が夜の間も響き渡るような熱帯夜


扇風機と風鈴だけで乗り切ろうとする少年がボロアパートの薄暗い角部屋で静かに1人、本を読んでいます。

そんな蒸し暑い部屋、静かにちりんと風鈴の音がなりました。


「あれ?今日は風がないから風鈴はならないと思っていたのに」と、少年が小さく呟くと

窓から不自然な光がピカピカと薄暗い部屋を照らします、少年は何が起きているのか全く理解しないうちに、光源が現れると

それは星なのです、絵に描いたような露骨な星なのです、その星からテンション高めの声で

「やぁ!オレは流れ星のレナ、君の名前は?」

「え...僕?僕は...........そら...」

「そら!いい名前だね、ママが付けてくれたの?」

そうレナが調子が良さそうに訊くとそらは黙ってそっぽを向いてしました。

そんな様子のそらを置いてレナは話し続けます。

「ねぇそら、そらはどこか遠い場所に行って見たいと思わない?」

「遠い場所...?だめだよ僕は家にいないといけないんだ」

「ん〜、大丈夫!バレないよ!!」

「(そういうことじゃないんだけどなぁ...)」

「どこに連れて行ってくれるの?」

「そうだねぇ...あぁ、オレは素敵な場所を知ってるんだ、着いてくる?」

「どこに連れて行ってくれるか聞いてるんだけど...」

「よーし!そうとなれば旅に出るぞ!朝までに帰ってくればいいんだろ?」

「え.....まぁ...うん.....。いや、僕ついて行くなんて言ってn 」

「よしよし!行くぞそら!うーん、そうだねぇ

そこにある白い布を被ってくれよ」

「シーツのこと...?被ったらなんも見えなくなっちゃうよ?」

「心配しなくてもいいぞ!とりあえず被ってくれ」

「わ、わかった...」

そう言ってそらはシーツを被ると

レナがそらの周りをぐるぐるっと2周した途端唐突にそらの周りが小さな星の粒が明るく照らされます

「わっ、え?僕今シーツ被ってるよね...?」

「うん!被ってるよ!どう?凄いでしょ!」

「うん...!!!すごい!レナすごい!!」

そらは随分と気に入った様子で鼻歌を零しながら部屋をウロウロしています

こうなるのも分かります、なんせシーツを被っているのに周りが鮮明に見えるんですから。


「やっとオレの凄さが分かってくれた?そら、ウロウロしてないで靴を持ってきて」

「わかった!!!」

と無邪気に玄関に走っていくとすぐに戻ってきて

「ねぇレナ!僕この前長靴を買ったんだ!黄色の長靴!これ履いて行ってもいい?」

「もちろん!なんでもいいから早く持ってきてくれよ」

「わかったぁ!」

レナは走って長靴を取りに行きました

片手に長靴を持って、戻ってきたかと思うとすぐにそらは無邪気に言います

「ねえ!僕が長靴履いてるからレナは傘になってよ!」

「傘かい?任せな!」

と言うとレナはその場でぐるぐるっと3回転するとみるみるうちに青紫色の傘になり、傘の頭に少し小さくなった星がちょこんと付いています、これが本体

「でも雨も降ってないのに傘と長靴なんて邪魔じゃないのか?」

「うーん...いいの!別に!でもだって素敵でしょ?似合う?」

そうそらは笑うとゆっくり一回転してレナに見せます。

「うんうん。似合ってる!よし!オレはもうそんなことより出かけたいんだ!こんなジメジメした部屋から早く出たいんだ!」

「わ、わかった!」

「よし!この窓から外に行くぞ!」


「え?この部屋2階だよ...?」

「心配することないぞ!オレを信じろ!!」

「わかった、僕レナのこと信じるね!」

するとレナはそらに窓から足を出し、ゆっくり地面で足を付け、歩くようにして、と指示するとそらはその通りに従います。

「わ、わ、え、大丈夫なの?怖いんだけど...」

「オレのこと信じてくれるんじゃなかったのか?」

「信じるけど.....。うん、信じる」

そういうと宙に足を置き空中でそらは立ち上がりました

「え!え!すごい!ホントに立てた!レナすごい!!」

「あんまりバタバタすんなよ、なんかの拍子で落ちたら危ないだろ」

「わ、わかった...」

「よし、そしたら階段を降りるように歩いてみて」

「任せて!!」

そういうとそこに階段があるかのようにそらは上手に歩き、地面まで辿り着きました。

「わ!すごい!ほんとに凄いね!!」

「そりゃあな、オレはすごいからな」

と誇らしげにレナが話すとどこからともなく地図を取り出しました...

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