第4話 対話2

「話を戻そう。冒険者が凶悪な魔物を見つけるのと同じで、巡回する魔物の管理官が冒険者に何度か遭遇するようになる。するとちょくちょく戦う訳だな、そして何人か冒険者が死ぬぅ、魔物の管理官も仲間と言う護衛を引き連れるぅ、冒険者も討伐隊編成するぅ、戦いが激しくなり死亡者が増えるぅ、それがギルドや国を動かす事になるぅ、大きな戦争になるぅ、今に至るぅって、こんな感じ?」

「「「「・・・」」」」

「まぁ途中に何があったかは知らないが、双方とも謀略が有るだろうけどさ、切掛けは偶然的で突発的な事故みたいなものさ」


「じゃ私たちは・・・」

「最初に言っただろ。利用されただけさ」

聖女の質問に答えるディバル。

「それはワシらも同じなのか?」

「あぁ、魔族の中にもそんな考えを持つ者は居るだろうね。でも人間ほどではないさ。君たちは強さを重んじるからね。愚かな人間とは違うよ」

「僕たちのどこが愚かだって言うんだ!!」

「ん? 分かってて利用されてるとこ? 私腹を肥やす事しか考えない上層部を知りながら何もしない事? それとも、もうどうでも良いと思ってる事かなぁ?」

「!!!・・・」

またもや何も言い返せない勇者と聖女だった。


「そもそもが、お互いの事を知らなすぎる訳だ」

「そんな事言ったって・・・」

「魔族の生態なんて知らないわよ」

勇者と聖女は否定的だ。

「私は元人間だから知ってるけど、世界が違うからどうかしら・・・」


「それはねぇ、同じなんだなぁこれが」

魔女っ娘に世界が変わっても人間の本質を教えてあげた。

「そっかぁ・・・人間って愚かねぇ」

「ウム」

「貴方達、元は人間でしょ!!」

「元が人間だからよ。魔族は全てに明確なの。まぁ多少文明は遅れているけどね」

「ほら、文明はこっちが上よっ!!」

「バリオラ、そんな事自慢しても・・・」

「良いじゃない自慢したって」

鼻息の荒い聖女だ。

「他者よりも優位に立って優越感に浸りたいのが人間の証だもんなぁ」

「べ、別にそんなんじゃ無いわよ・・・」

「私たちは力が全てなの。魔王様の絶対的な力で均等が取れているわ。だから人間の様に姑息で卑劣な事を考えないのよ」

「まぇ単純で力任せな所は有るがな」

「魔王様!!」

「魔王はそれで良いのか!?」

「どういう意味だ勇者よ」

「魔王が簡単に誰かの配下になったら他の魔族はどうなるんだよ」

「ふん、ワシの最大戦力が無効になったのだぞ、その時点でこちらに勝機は無い。それは死を意味する事だ。死んだ後の事など知らん。そして配下の者達はいまだ先の見えない戦いをしておる。ゆえに生き残った者が何とかするだろう」

「随分と身勝手だな」

「そうやって生きて来ただろう、ワシらも勇者おまえたちも・・・」

「・・・」


そこにディバルが茶々を入れる。

「あのさぁ、この世界に魔族なんて居ないからな」

「「何ぃぃぃ!!」」

「「ええぇぇ!!」」


「魔素を扱い魔法を行使出来る者が魔族であれば人族も魔族だな。人族が持つ魔族の定義は自分たちと容姿が違い、自分達より強靭で、自分達より魔素が多い者だろ?」

「「・・・」」

何も言い返せない勇者と聖女だ。


「そもそも魔族なんて発想が女神たちには無いしその言葉を許しはしない。なぜなら利己主義な人間の造語だからさ」

「「「・・・」」」


ここでディバルが魔王と魔女っ娘に問いただす。

「二人は自分の種族を知っているよな?」

「ええっ!!」

焦る魔女っ娘。

「クエルノ族だ」

魔王が答えた。

「知らなかったぁ・・・」


「余談だが、ここからは遠い別の大陸にノタムル国が有って、そこにクエルノ族が大勢存在するが、お前たちはその大陸から旅立った者の末裔だ」

「ふ~ん、そうなんだぁ」

魔女っ娘にはあまり関心が無かったようだ。


「魔族と呼び始めたのは別の国の人族でギルドを通じて広まったみたいだね」

「「「へぇぇ」」」

「魔物も全て種族名が有り総称すれば魔族と言えない事も無いが・・・」

「ほら、だったら・・・」

「女神様がそれを認めないからさ。全ては種族が明確になっているだろ? 人族の場合も本当はホミニニ族が正式種族名だけど色んな部族や人種がいるだろ? 何々人ってさ。余りにも部族名が増えて多様な人種になったから、いつの間にか人族って統一されてるようだけど、人種が増える事で文化間の戦争してるじゃないか。言語が違ったり、奉る神が違ったり、容姿が違ったりするだけで同種だろうが異種だろうが殺し合いをする。これって自然の行為だけど・・・」

「「「・・・」」」

「まぁ、どうでも良い話さ。ハハハハッ」

魔物を一つの枠組みにしたい聖女だが、女神がその事を望まないと知ると関心が無くなったようだ。




「じゃ本題に戻ろう」




「奴隷になる事が前世に戻る条件なのか?」

「”かもしれない”条件だな」

「「・・・」」

「可能性はどうなのだ?」

「100%だ」

「だったら・・・」

「但し、俺の気分次第でお前たちを殺せるからさ」

「「「「!!!!」」」」

「そうなると戻れないだろ? だから”かもしれない”訳だな」

「クソっ、ワシは奴隷にはならん」

「僕もだ」

「「私もよ」」

魔王とディバルの会話だが魔王に同意する三人だ。


「そんなに奴隷が嫌なのか?」

「「「「当り前だ!!!!」」」」

「ったく馬鹿ばっかだよなぁ」

呆れるディバルに、後ろから声が響いた。


「ディバル様はお前たちに合わせた言葉を使われておる。私めからすれば、同じく”眷属”となるお前たちに早く理解して欲しいと願うのだが、もう少し強引に進めては如何でしょうか我がアルジよ」


「お、スクリーバ。こいつら眷属って分かるのか?」

「分かるに決まっとる!! 最初からそのように言えば良い物を・・・」

「なぁバリオラ。眷属ってあの眷属か?」

魔王は知っていたが、勇者は前世のゲーム的な記憶しか無かったようだ。


「ええっとねぇ、同族とか配下の者かな?」

「確かにその通りだが、俺の眷属になると言う事は、人間とクエルノ族を辞めるって事だ」

「「何ぃぃぃ!!!」」

「「えぇぇぇ!!!」」

「その代わりに、女神さまが与えた特典よりも、もっと良いモノをやろう」

「そっ、それは・・・」






凄い特典とは・・・


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