二十歳


 成人式をしたあの頃。はじめてお酒を口にしたあの頃。


 ビールが苦く、まだおいしさに気がつけなかったあの頃。それでも、大人ぶってビールばかり飲んでいたあの頃。


 大人にはなったけれど、大人にはまだなれていなかった。


 まだまだ、一瞬をあははははと笑い合えた。些細なことも、高い声で面白がることが出来た。靴下の左右を間違えても、けらけらと笑ったし、寝坊して時間が無くてすっぴんでもまだ笑えていた。


 しょぼぼぼんとちょっとしたことに、軽く悲しみ、些細なことに指をさして喜べた。感情はゴムボールのようにポヨンポヨンと跳ねながら生きていた。


 高く大きな声で、ひとつの事にただただふわふわ笑っていられた。


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