【間章】アカノとクロノの邂逅 

私、アカノ=エンドロールが初めて弟と出会ったのは、私が7歳の頃だった。


冒険家だった父が国からの魔族掃討戦依頼を受けて戻ってきた時に連れられていた。


年のころは5歳くらいだろうか?かすり傷は幾つかあり、疲労している事も容易に感じる事が出来た


少し痩せこけていて、私に対して怯えた目を向けていた


そんな彼を父は「今日からお前の弟だよ。」と言って私に紹介した





私は彼を見ると色々な意味で驚きを禁じえなかったのを覚えている。


まずは黒髪黒目であること、私の住んでいた町もこの世界に漏れずに黒髪黒目は不吉の象徴と言われていた。


何故、そこまで毛嫌いされるかは当時の私は余り理解できていなかったが、詰まる所その希少性なのだろう


人は自分と異なる部分を見つけると差別意識や比較対象として侮蔑するきらいがある


曰く、『魔族と人族の混ざりもの』、『神に愛されていないモノ』、『心が濁っているあまりに外見に表れる』等の根拠があるかも怪しい風説が捻じれて『人族に害を齎す存在』になってしまった


でも当時の私はそれを盲目的に信じており父が連れてきた男の子に忌避感を覚えてしまった





そして…彼のその髪とその目が黒いのに綺麗だと感じた自分の事


髪は黒いのに光沢をより鮮明に映しており、黒い目はその奥が透き通っていて、綺麗だった





最後に突然弟が出来たと言われた事


ある日突然に、何の前触れもなく弟だと紹介されたのだから、これは至極まともな感性ではないだろうか?





「お父さん…でもこの子、黒いよ…?」


恐る恐る父にそう尋ねる私を見て彼はビクッと身を震わせる


怯えた目は恐怖の色に変わっていた様に思える





私の言葉を聞いた父は、そっと私の頭に手を置いて撫でながら目を見て優しく微笑んだ


「そうだね…この子は黒髪黒目だ。この子は良い子なのにただそれだけで色んな人から虐められていたんだ。」


父のその言葉を聞いて、男の子を見ると体を微かに震わせていた


「お父さんはアカノにはね、こんなに小さい、いい子の心の中を見ないで、ただ髪と目が黒いというだけで虐める様な子になってほしくないんだ。アカノはお姉ちゃんになるんだから弟を守ってあげて欲しいんだよ。」





それを聞いた私は、子供特有の無邪気さ故にだろうか?


何か重大な使命を帯びた気になった、父に頼られた事で得意になったのか笑いながら


「うん!!!私、弟を大事にする!!大事にしてずっと守っていてあげる!!」と宣言した


それを聞いた父は嬉しそうな表情を浮かべて「そうか」とだけ呟いた





私は彼の前に立ち手を差し伸べる


「私は、アカノ。アカノ=エンドロールよ!今日からアナタのお姉ちゃんだから!!これから守ってあげるから宜しくね!!」





それを聞いた彼は、オドオドしながら私の向けている手に自分の手を差し出す


「よ、宜しく、ね…お、おねえちゃ、ん…?」





私はその声と可愛らしい仕草に庇護欲を掻き立てられた


手をブンブンと振りながら「うん!宜しくね!!!」と声を弾ませて返答した


…多分、私は満面の笑顔という言葉の真をついた程の笑顔だっただろう





「それで、あなたのお名前はなぁ~に??」と聞いた私に父は彼の言葉を遮る様に返答した


「この子にはまだ名前が無いんだよ…何か良い名前をあげたいんだけどな…俺にはその辺のセンスが無いのを自覚しているからな。」





それを聞いて、ムムムと頭を捻った私は、少し思案した後にパッと浮かんだ名前を言った


「じゃあ、クロノ!!クロノが良いわ!私は赤い髪、赤い目でアカノだし、アナタは綺麗な黒い髪、黒い目をしているし!!今日からアナタは『クロノ=エンドロール』よ!!」





それを聞いた父はハニカミながら「また安易だな…アカノは俺と同じレベルか…」と言っていたけど気にしない


クロノ!!これ以上にないくらい私の中ではストンと落ちた名前だった





それを聞いた彼は少し戸惑った表情を見せた後、嬉しそうに笑いながら言った


「はい…僕はクロノ、クロノ=エンドロールです。宜しくお願いします、お姉ちゃん」





この瞬間に私に新しい家族であり、大事な弟であるクロノ=エンドロールが出来た瞬間だった


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