第55話 履いてた方が安心よね

 あれから3日経った現在、あたし達は昼休みに化学予備室で、お昼ご飯を食べていた。


「よかったね はっちゃん、転校しなくて」


「ありがとうぅございますぅ、青草先輩のコーヒーもぉ、また飲めてぇ、嬉しいですぅ」


部屋の中には、主の究とはっちゃん、それとあたしとシューガールの7人がいる。


 転校が取り止めになって初登校のお祝いと、みんなへの紹介をかねて、お昼を一緒に食べようというコトになったのだ。


 こういう集まりの仕切りはタカコが得意なのだが、全員を知っているのがあたしだけなので、今回はMC役をしている。


「えーっと、みんなコーヒー行き渡ったかな? それじゃ、はっちゃんの登校を祝って、カンパーイ」


みんなでコーヒーカップを掲げると、口もとに持ってきて飲む。というかまだ少々熱いから、すすることになる。そして拍手。


「じゃあ、いただきます。みんな食べながら聞いてね、自己紹介ならぬ、タコ紹介するから」


「なによタコ紹介って」


タコさんウインナーを口に運びながらタカコがツッこむ。


「今話したのが、佐藤タカコ。あたしはタカコって呼んでいるけど、シューガールのみんなはサトーちゃんて呼んでいるわ」


「シューガール?」


はっちゃんの疑問に、タカコが説明する。


「あげは以外のこの4人のチーム名のこと。あたしが佐藤、右隣のギャル美人が加藤、左隣の清楚美人が武藤、そしてはっちゃんの隣にいる先輩が尾頭でしょ」


その説明を聞いて、はっちゃんは納得する。


シュガー砂糖のガールなんですねぇ」


「そ、よくわかったわね。はっちゃんアタマが良いなー、それともセンスかな? あ、両方かなー」


「そ、そんなぁ」


もじもじとテレる姿が、むちゃくちゃカワイイー。


そしてさすがタカコ、仕切らせて場を和ませるセンスはさすがだ。もう能力とか特殊技能とかいってもいいくらいだ。


「ところでタコ紹介というのは何ですの? 自己紹介なら知っていますが」


静かに清楚に訊いてきたのは、ムトーちゃんだった。


「ほら、自己紹介は自分からでしょ? あたしがやるから他人の自己紹介で他コ紹介」


「それなら己れのところも変えるべきではないかしら」


「それはそのぅ」


あたしが言葉につまると、カトーちゃんがツッこむ。


「そんなこまかいコト、どうでもいいでしょ。こんなモン、ノリよ、ノリ」


「キチンとするところはするべきです」


ああ、まだこの2人仲直りしていないのか。せっかくの楽しい雰囲気だったのに。


 あたしとタカコがおろおろしかけると、意外にもビトーちゃんが2人をたしなめた。


「ムトーちゃんもカトーちゃんもいい加減にして。仲直りしないと怒るよ」


その言葉を聞いて、2人はしゅんとして仲直りの握手をした。

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