第34話 洗いましょう、出しましょう

「次の手?」


「ただ止めなさいと言っても、みんな素直に聞くとは限らないからね。なにか他のことに興味持っていくようにしないと」


「すごい、そんな事考えてもいなかった」


驚くあたしとタカコは、顔を見合わせる。


「まあ、まだ何も考えていないけどね。とりあえず何か考えておくわ」


まだ辛そうなカトーちゃんを見て、あまり長居できないなと保健室をあとにすることにした。


「あ、あげは、ちょっと待って」


カトーちゃんに呼び止められて、振り向く。


「そのシュシュ、ショートには似合わないわ」


あたしはちょっと顔をしかめる。


「妹からのプレゼントなの」


「うーん、なら普段は手首に付けといたらどう?」


「考えとく」


そう言って出ていく。カトーちゃんなりの優しさとか美意識なんだろうが、ちょっとおもしろくないな。

それが顔に出ていたらしい、タカコがフォローの言葉をくれた。


「髪なんかすぐ伸びるわよ、しじみちゃんには校則で付けられなかったと言うのはどう?」


「タカコからみても似合ってなかった?」


「ちょっとね。短い髪をむりやりまとめている感じで、ちょっと子どもっぽい感じがする」


うーん、じつは自分でもそう感じていたので、迷ってはいた。タカコの意見を採用して、しじみにはそう説明しよう。


あたしはシュシュを外すと、左手首に差し込んだ。




 教室に戻ると、なにやらもめていた。見ると、ムトーちゃんが男子数人と対立している。


「よそのクラスのヤツが、ジャマするんじゃねーよ」


「お黙りなさい、女子が嫌がることをするもんじゃありません」


その後、この俗物がっ!! とでも言いそうな気迫で手刀を構える感じで、ビトーちゃんを庇っていた。


 近場にいた女子に何事か訊いてみると、男子がビトーちゃんのスカートを捲ろうとしたのを、ムトーちゃんがジャマしたらしい。それを聞いたタカコが、ダッシュしてビトーちゃんに寄り添い抱きしめる。


「ビトーちゃん、今日は大丈夫なの」


言ってる意味がわからないけど、その言葉に黙って頷くのを確認してタカコはホッとしていた。


タカコはムトーちゃんと男子の間に立つと、男子に言う。


「あのね、さっき生徒会室に行ってきたの。スカートめくりが問題になっているって。あんた達のせいにしていい?」


「はあ? なんでだよ? 俺達だけじゃないだろ」


「もちろんそうだけど、これ以上やるとそうなりかねないわよ。だからさ今日はやめてくれない」


タカコが片手で拝むような形をして、お願いするような言い方をすると、男子はとまどった。


「タカコに借りをつくっておいた方が、いいんじゃない」


あたしも助け船をだして、男子達は不貞腐れながらもなんとかおさまってくれた。

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