第12話 その6

 午後の休憩時間に、タカコ、カトーちゃん、ビトーちゃんの4人で集まっていた。


 窓際壁の席にあたし、その前にビトーちゃんが対面で、カトーちゃんとタカコがその両隣に座っている。

 うん、完璧な防御陣形ディフェンスフォーメーション、さすがの蛮族もこれでは花園に来れまい。


 そしてあたし達の話の内容は、昼休みの出来事である。

 女子高生には低カロリーと書かれた高カロリーの食事とスイーツ、そして恋バナが生きる糧なのだ。


「ほうほうほう、あの青草がねぇ」


 興味深そうに頷くタカコ。


「いいんじゃない、どうでもの方だけど」


 ネイルの手入れをしながら、興味なさそうに言うカトーちゃん。


「意外な2人です……」


 タカコほどではないが、興味ありそうなビトーちゃんがつぶやく。


「で、どうするの? あげは」


タカコがぐいぐいくる。


「とりあえず明日はお母さんが休みだから、急いで帰らなくていい日なんで、一緒に喫茶店に行く約束をしてあるの」


「ほほう、一気に家族にご挨拶ですか」


「ナポリタンを食べに行くだけよ。その後のコーヒーも大事らしいけど」


 そう、それだけのはずだ。なのに何故だろう、話しているうちに胸騒ぎがしてきた。


「で、あげはの役割は? どうやって2人をくっつけるの?」


「何にもしないわよ。コミュ障の究に橋渡しするだけ。究もコーヒーとナポリタンにしか興味ない筈よ」


「ふうん、じゃあ、この話しはお預けね。明日の夜に報告を待っているわ」


 興味なさそうに言いながらも、カトーちゃんも気になるらしい。期待しない方がいいよ、なんたってあの究なんだから。


 午後の授業も終わり、あたしは帰途につく。

 弟妹の面倒をみたあと、遅くに帰ってきたお母さんに、明日の帰りは遅くなるのと、食事をしてくることを伝えた。


「あらまあ珍しいわね。あまり遅くならないようにね」


いつも家事をしてくれて有り難うね、ぽそっとつぶやく。

気にしているのかな。好きでやっているから、気にしなくていいのに。


「ただーいまー」


こっちは、気にしてほしいと思う。

やれやれと思いながら、玄関に行くとお父さんが、サラリーマンから、わかりやすい酔っ払い親父に、ジョブチェンジしていた。


「さぁてと」


 お母さんと2人で、酔っ払い親父をかつぐ。リビングまで連れてくると、シワにならないようにスーツを脱がせる。

 年頃の娘に何やらせてんのよ、と思うが、翌朝着ていくスーツが無いと騒がれるくらいなら、時間に余裕がある夜に面倒な事をやった方がいい。


 いつもならあたし1人で担いで、脱がすんだけど、今日はお母さんがいるから楽だ。

 あたしが上着を脱がし、お母さんがシャツとスラックスと靴下を脱がす。あとはお任せします。


 しわを伸ばしながらスーツをハンガーにかけると、明日のために寝ることにした。

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