02

 私以外の女性と交わらないのかと、訊いてみる。セックスした後の、まどろんだ時間のなかで。起きているのが寝ているのかわからない空間で。


 彼。


 さびしそうに、笑った。


 彼のなかには、私しか、いないのだろうか。

 誰でもいい。彼ではない誰かと、彼の奥にある何かを、共有したい。そう思った。それだけ。


「おまえは、俺以外の誰かと寝るのか?」


「寝ない」


 私のなかには、彼だけ。


「なのに、俺には浮気を勧めるのか」


「ごめん」


 よく考えれば、おかしな話だった。好きな相手に浮気を勧めるなんて。


 もういちど、彼に手を伸ばす。

 果てることのない彼の、奥にある、何か、つらくて切ないものに。


 私しかいないのなら。


 私が受け止める。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る