エピローグ

「今回は何から何までありがとう」


 ヴェントレットたちがひっとらえられていき、無事返金もさせると俺たちはこれ以上この町に留まる理由もないのでさっさと帰りの馬車に乗った。

 馬車に乗るとメリアは張りつめていた気持ちが楽になったのか、一気に疲れたような表情になる。

 そして俺に対して少し照れたように礼を言った。そう言われるとこっちまで気恥ずかしくなってくる。


「まあ結構な依頼料を要求してしまったからな。その分は働かないといけない」

「でも……本来ギルドの職員がそこまでしてくれる訳はないでしょ? 何で?」


 メリアはこちらに何かを期待するような眼差しを向ける。

 俺は彼女が期待する答えはよく分からなかったので正直に答える。


「俺も初めのころは色々周りに助けてもらったからな。近くに困っている人がいるなら出来るだけ助けてやりたいという気持ちはある。後は、ギルドとしてもああいう冒険者がいるのは困るからな、ぎゃふんと言わせてやりたかっただけだ」

「そうなんだ」


 メリアは少しだけ落胆したような反応をする。

 一体どうしてだろうか。


「メリアはこれからどうするんだ?」

「どうするって?」

「これでこの件は一区切りついた訳だが、これからもソロでやっていくのか? 仲間がいればもっと受けられる依頼の幅も増えて活動もしやすくなると思うんだが」


 例えば探索に秀でたシーフがいれば遺跡探索などもしやすくなるし、攻撃魔法や回復魔法が使える者をパーティーに入れれば戦闘での安定感や選択肢も増す。

 ソロでの戦闘は一度のミスが死に直結するため非常に危険である。それはメリアもよく分かっただろう。


「うーん、それはまだいいかな。今回の件でパーティーメンバーへの理想が高くなっちゃったし」


 そう言って彼女は意味ありげにこちらを見る。

 下手な相手を選ぶと酷い目に遭う、ということだろうか。


「ま、焦って選ぶとろくなことにならないしな。いい人が見つかったらでいいんじゃないか?」

「そうね……そう言えば昨日、ヴェントレットと話している時私のこと彼女って言ってくれたでしょう? あれはどういう意味?」

「そんなこと言ったっけ……言ったとしてもそのままの意味だと思うが。さすがに依頼人に変な気持ちは持たない」

「ふん、そう」


 俺の答えになぜかメリアは不機嫌そうにそっぽを向く。


 が、やがて疲れが限界に達したのか、目をつぶるとゆっくりとこちらに倒れ掛かってくる。どれだけ剣の腕が立っても寝顔は年相応で、起こすのもためらわれた俺はそのまま肩を貸したのだった。

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